平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横溝正史『完本 人形佐七捕物帳 二』(春陽堂書店)

 横溝正史が愛惜をもって描いた時代劇調ミステリシリーズ―江戸を舞台に、人形のような色男である佐七が繰り広げる推理劇。
「敵討人形噺」「恩愛の凧」「まぼろし役者」「いなり娘」「括猿の秘密」「戯作地獄」「佐七の青春」「振袖幻之丞」「幽霊姉妹」「二人亀之助」「風流六歌仙」「生きている自来也」「血染め表紙」「怪談五色猫」「本所七不思議」「紅梅屋敷」「からくり御殿」「お化小姓」「嵐の修験者」を収録。
 2020年2月、刊行。

 第二巻は、前巻から引き続き『講談雑誌』に連載された作品と、単行本用に他シリーズから佐七ものに改変した書下ろし作品を収録。
 佐七がしくじってほっこりする正月人情物「恩愛の凧」、佐七の一人語りによる推理の過程が楽しめる「まぼろし役者」、読者も狐に化かされる「いなり娘」、佐七の謎解きが楽しい「括猿の秘密」、佐七とお粂の大げんかが意外な方向に向かう「佐七の青春」、佐七の本格ミステリ物としては五本の指に入る傑作「風流六歌仙」、連載最終回ならではの奇妙な一作「血染め表紙」、単行本向け完全書下ろし「本所七不思議」など、様々な趣向が楽しめる。
 佐七、お粂、辰五郎、豆六という一家四人が勢ぞろいし、作者の筆ものってきたところでの連載打ち切りは残念だっただろう。
 本格ミステリファンなら、何はなくとも「風流六歌仙」を読んでもらいたい。他の作品も、捕物帳ならではの楽しさが味わえる。