平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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トマス・H. クック『夜の記憶』(文春文庫)

夜の記憶 (文春文庫)

夜の記憶 (文春文庫)

ミステリー作家ポールは悲劇の人だった。少年の頃、事故で両親をなくし、その直後、目の前で姉を惨殺されたのだ。長じて彼は「恐怖」の描写を生業としたが、ある日、50年前の少女殺害事件の謎ときを依頼される。それを機に"身の毛もよだつ"シーンが、ポールを執拗に苛みはじめた――人間のもっとも暗い部分が美しく描かれる。(粗筋紹介より引用)

1998年発表。2000年5月、邦訳、文庫本刊行。記憶シリーズ第4作。



暗い過去がキズとなっているミステリー作家ポール・グレーヴズが、50年前の事件の解決を依頼され、捜査を始めるのだが、聞きこみと仮説ばかりでこれが何とも地味。正直途中まで苦痛だったのだが、中盤からだんだん怖くなっていく。人が持つ闇とはこれほどまで深いものなのか、と思わせる作品だった。

現在と過去、さらにポールの小説世界が絡み合って反転していく展開は圧巻。ただ、読みこむほど心が暗くなっていきそうだ。明るい作品が好みの方には全くお勧めできない。

どうでもいいけれど、ポールではなく、脚本家のエレナ―・スターンに最初から頼めばよかったんじゃないか。