平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ドナルド・E・ウエストレイク『ホット・ロック』(角川文庫)

ホット・ロック (角川文庫)

ホット・ロック (角川文庫)

 

  長い刑期を終えて出所したばかりの盗みの天才ドートマンダーに、とてつもない仕事が舞い込んだ。それはアフリカの某国の国連大使の依頼で、コロシアムに展示されている大エメラルドを盗み出すというもの。報酬は15万ドル。彼は4人の仲間を使って、意表をつく数々の犯罪アイディアを練るが……。不運な泥棒ドートマンダーの奇怪で珍妙なスラプスティック・ミステリー。(粗筋紹介より引用)
 1970年5月、アメリカで発表。ドートマンダーシリーズ第1作。1972年6月、邦訳刊行。1998年9月、新版刊行。

 

 天才的犯罪プランナー。盗み専門の職人肌の男。イリノイ州生まれで孤児院育ちの37歳、ジョン・アーチボルド・ドートマンダー。二度目の刑務所暮らしが仮釈放になったばかり。そんなドートマンダーと義理のいとこで相棒のケルプは、アフリカの小国タラヴウォの国連大使に依頼され、イギリスからの独立の際に二つに分かれた相手の国に渡ったエメラルドを盗み出すことになる。成功報酬は1人3万ドル×5人で15万ドル。他に生活費として1人当たり週150ドル。他に3人の仲間を引き入れ、無事にエメラルドを盗み出したまではよかったが、予定外のことが続き、その都度犯罪計画を立てる羽目になる。
 元々は悪党パーカーシリーズの新作を練っているときに生まれたがパーカーには似合わないと没にしたが、捨てるには惜しいアイディアとして新たに誕生したのがドートマンダー。『ルパン三世』を彷彿させる、奇想天外な犯行手段の数々(すみませんねえ、好きなもので)。どんどんエスカレートしていく犯罪が笑える。ドートマンダーを始めとする登場人物たちのやり取りも面白い。なんか最後のほうはもうやけくそみたいな感じが最高。
 そんなことないだろう、などと思いながら何も考えずに笑えばいい作品。エンターテイメントに徹すると、本当に面白いな。いざとなると何でもやってしまうのが、アメリカの作家らしい(これって偏見か?)