- 作者: 原りょう
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: 単行本
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2018年3月、書き下ろし刊行。
『愚か者死すべし』以来14年ぶりとなる新作長編。まさか原りょうの新作長編が読めるとは思わなかった。
単なる身辺調査依頼かと思ったら当の人物は既に死んでいるし、そのことを依頼人に伝えようと思ったら銀行強盗に巻き込まれる。しかもその消費者金融の金庫には予想以上のお金が詰まっている。こうして沢崎は事件に巻き込まれていくのだが、テンポが実に快調。はっきり言ってテンポが良すぎ。沢崎歩けば事件に遭遇するし、沢崎待っていれば関係者がやってくる。ここまで順調だと、逆に何らかの罠があるのではないかと思ってしまうぐらいだ。
レギュラー登場人物がほぼ登場、両切りピースは健在。沢崎の行動パターンや会話なども含め、原が今まで作り上げてきた世界観から一歩も外を出ずにすべてが構成されていることがわかる。それが良いことか悪いことかはわからないが、一気読みさせる力も変わっていないのは良いことである。長年待たせているのだから、スタイルを変えない頑固さもまた魅力の一つなのだろう。ただ、これだったらもう少し早く出せたんじゃないかと思ってしまうのも事実だが。ラストで沢崎は東日本大震災に遭遇する。次作は何か新しいことが起こるかもしれない。
はっきり言ってしまうと、読めれば満足、という気持ちが強いことも事実。読者が期待していた世界観が裏切られなかったことに満足していることも事実。まあ、筆力がなかったら、いくら世界観が同じでも退屈して受け付けられない。大絶賛するほどではないけれど、待っていて良かった、といえる読み応えがある作品になっている。
どうでもいいけれど、『愚か者死すべし』の感想がどこにもない。読んでいるはずなのに、感想を書いていないなんて……。この頃、忙しかったからかな。どうせならもう1回読んでみようと思う。いっそのこと、全作読み返してみてもいいかも。