- 作者: フィリップカー,Philip Kerr,東江一紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1992/06
- メディア: 文庫
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1989年、イギリスで出版。1992年、翻訳発表。
東京で働いていたころ、「深夜プラス1」にサイン本が置いてあったので、なんとなく購入したままになっていた本。サイン本といっても、名前が書いてあるだけの、ものすごく素っ気ないものだが(苦笑)。
一人称主人公、タフな私立探偵など、典型的なハードボイルドものだが、舞台がナチス台頭中のベルリンというだけで世界はガラッと一転する。正直言って法律や正義など通用しない時代でどのようにしてハードボイルドの世界を作り上げることができるのだろうと思いながら読んでいたが、予想通りナチスのメンツとやり合いながらもしっかりと正統派ハードボイルドになっていることに素直に感動。相手がゲーリングだろうと、皮肉な口調が全く変わらないのはお見事といってよい。よくぞ、この世界観を作りあげた。
当時のドイツの状況なども描写されているし、ゲシュタポの理不尽さ、恐怖などもしっかり描かれている。まあ、権力による圧倒的な暴力が苦手なので、読んでいてちょっと苦労したが。結末がどことなく霞がかかったようになっているのは、シリーズものを最初から想定していたのだろうか。
本書は作者のデビュー作であり、以後書かれた「ベルリン三部作」の第一作。続きは気になるけれど、読むのはしんどそう。