平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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周木律『眼球堂の殺人 ~The Book~』(講談社ノベルス)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)

天才建築家・驫木(とどろき)(よう)が山奥に建てた巨大な私邸<眼球堂(がんきゅうどう)>。そこに招待された、各界で才能を発揮している著名人たちと、放浪の数学者・十和田(とわだ)只人(ただひと)。彼を追い、眼球堂へと赴いたライター陸奥(むつ)藍子(あいこ)を待っていたのは、奇妙な建物、不穏な夕食会、狂気に取りつかれた驫木……そして奇想天外な状況での変死体。この世界のすべての定理が描かれた神の書『The Book』を探し求める十和田は、一連の事件の「真実」を「証明」できるのか? (粗筋紹介より引用)

2013年、第47回メフィスト賞受賞。同年4月、講談社ノベルスより刊行。



天才建築家が建てた奇妙な建物、眼球堂に集まる各界の"天才"たち。不可能連続殺人事件。閉じ込められた山の中の館。いつか見た、昔懐かしの本格ミステリである。新本格ミステリブームの頃ならいざ知らず(その頃でも古い!と言っているだろうが)、何も今時こんなミステリを書く必要もないだろうに、と思いながら読んでいた。しかもトリックは、いつか見たことがあるようなものの組み合わせ。ページを無駄に使っているとしか思えない蘊蓄の数々。"天才"と言われる割に天才ぶりを発揮できない登場人物たち。なんか、新本格の悪いところ(逆にそこがいいという人もいるだろうが)を寄せ集めたような作品。森博嗣綾辻行人の二番煎じとしか思えない。最後の章なんて、本当に悪影響を受けたとしか思えなかった。

作者自身のオリジナルな部分(というほどでもないかな……)は、探偵役の十和田只人が神の書『The Book』を探しているところか。残念ながらその設定も作品に溶け込んでいない。

あまりにも古くさい設定の作品を出すのなら、もう少し新味のあるところが見たい。それがなければ、ただノスタルジーを求めただけの作品に終わってしまう。