- 作者: 江東うゆう
- 出版社/メーカー: 新風舎
- 発売日: 2003/04
- メディア: 単行本
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2002年、第12回鮎川哲也賞最終候補作。2003年4月、一部改めたうえ、新風舎より刊行。
作者は愛知県出身で三重大学大学院修士課程修了。作品はこれだけのようだ。漫画家としての名義は江東星だそうだが、刊行されたものが無いところを見ると、同人活動のみの様子。本作品も新風舎という自費出版系の会社から出ているところから、自費出版なのかもしれない。「楽土」は、王粲の詩に出て来るとのこと。
最終候補作に残ったのだから多少は読みごたえがあるかと思っていたのだが、これが失敗。主人公の目の前に犯人が登場し、犯行の告白を聞きながら、何のリアクションも無し。仮にも大学講師が無断欠勤を続け、妻も失踪、妻の妹も失踪していたのなら、警察なり自治体なりが何らかの行動を起こしてもおかしくない。それ以上に、失踪したから家の権利証が欲しいなんて依頼、普通に考えたら犯罪だろう。登場人物全員がおかしな行動を取っているので、読んでいて腹が立ってくる。いくら刺されたとはいえ、気に入らない依頼者に接触したというだけで職員を解雇する弁護士などいるわけないだろう。法律、権利とうるさい弁護士が法を破ってどうする。主人公も犯人も、ピントがずれているとしか思えない行動ばかりとっている。
失踪は密室殺人事件という結末だったのだが、このトリックにも呆れた。説明不足が一つの原因かもしれないけれど、実行自体不可能でしょう、これ。ええと、ここはどこ?と聞きたくなるようなトリックだった。
作者の独りよがりが全開な作品。これがよく最終候補作にまで残ったな、と別の意味で感嘆した。作者には悪いけれど、読む価値ありません。