平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

安土しげる『魔性〜死体なき連続殺人〜』(プロ・インター発行、鹿砦社発売)

時は昭和60年3月。泉佐野市にあるメッキ工場の工場長である会沢浩二は42歳。妻と二人の子供がいるが、甘いマスクを持つプレイボーイ。会沢は、パクリやサルベージなどをしている瀬尾治良から木村幸江という同い年の美人女性を紹介され惚れこむ。さらに瀬尾の会社の監査役である31歳の新川令子とも関係を持つ。会沢は手形のパクリ屋から逆に手形をぱくったが、怒った男から拳銃を突きつけられ、逆に得意の空手で殺してしまった。会沢は死体を会社の炉ですべて焼いてしまう。会沢はそのまま複数の女性と関係を続け、犯罪に手を染め、1年刊で6人を殺害し、遺体をすべて炉で焼いてしまうが、最後は令子に毒殺されてしまい、自らも焼かれてしまう。

1989年12月、初版刊行。



作者だが、どちらかと言えば安土茂名義の方が有名である。殺人犯として大阪刑務所第四区で15年間務め、その後は大阪刑務所関連の著書を多く出していた。そのため、この本も実録本に近いものだと思っていたのだが、読んでみると全然違う。著者プロフィールには「自らの体験をもとに、時代設定、関係者名を変えて書いたもの」」とあるから、それらしき事件があるのかと思って読んでいたのだが、自分の考えとは全然違っていた。

一応ハードボイルド風で、セックスの彩りが濃いサスペンス作品にはなっているが、面白いかといわれたら微妙。文章が生硬なので、小説としてのテンポも内容もどことなくぎこちない。作者が実際に聞いたという現実部分と、作者の想像部分が噛み合ってなく、いかにも作り物めいた仕上がりになっている。元々小説は作り物だが、それを感じさせないリアリティが文章や小説世界で求められるのだが、この作品はそこまで達していない。

さて、この作品は現実の体験をもとに、とあるが、実際は作者が刑務所内で聞いた話を基にしている。となるとそれらしき事件があるかと思ったのだが、こんな事件は聞いたことがない。これが本当なら犯人は6人殺害していることになるのだが、この事件に該当するような大量殺人犯は見当たらない。うーん、いったいどんな事件を聞いたのか、非常に気になる。それとも、複数の体験談を一つにまとめたものかもしれない。

本作品で確認したいのはそこだけかな。無理して読む必要ない作品である。

どうでもいいが、アマゾンにリンクがない(苦笑)。