平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

藤子・F・不二雄『T・P(タイム・パトロール)ぼん』第1巻(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集第3期第1回配本の一冊。時代・時間を問わず、歴史の流れに影響のない範囲で不幸な死を遂げた人々を助ける、それがタイム・パトロール(T・P)。偶然その活動を目撃した並平凡は、種々の要因が重なり、晴れてT・Pの見習い隊員となる。先輩隊員のリームに指導され、一人前の隊員になるべく活動を続ける。『少年ワールド』1978年8月号〜1979年9月号連載分の「リーム編」を収録。
地味ながらも藤子Fファンには人気の高い『T・Pぼん』が大全集に登場。第1巻は、2016年の世界に住む先輩隊員リームとともに活動するリーム編。『コミック・トム』不定期掲載のユメ子編よりも、行動が今一つ不安定な凡と、頼れる先輩ながらも実はおっちょこちょいであるリームとの絡みの方が面白いと思うのは私だけではないはず。リームって、藤子Fキャラでは珍しい姉ポジションだったと思う。

SFに歴史を絡めた物語は、藤子Fの趣味と知識を存分に生かしたものであり、本人も筆がノッていたと思われる。それほど人気を考えず、好き放題に描けた作品であった、とも勝手に想像している。学習雑誌がホームグラウンドだった藤子Fにとって、この作品はある意味オアシスだったのではないか。同じ傾向の作品ばかりを、そして読者を念頭に置いて描き続けていれば、それはどこかで破綻する。そんな欲求不満を解消するため、バランスをとっていたのがこの作品だったはずだ(まあSF短編もそうなんだろうけれど)。高橋留美子でいう『らんま1/2』と『人魚の森』シリーズみたいなものだな。
ということで、ハードカバーを買わなかった私は、読んだことのない潮コミックス未収録作品を早く読みたいのだよ、うん。