平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『チンプイ』第2巻(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集 チンプイ 2

藤子・F・不二雄大全集 チンプイ 2

藤子・F・不二雄大全集第2期第10回配本の一冊。中央公論社から出ていた「藤子不二雄ランド」で1985〜1991年に連載されていた作品。この作品も後半になると、すでにエリがマール星へ嫁ぐことが前提であるようなネタが多く出てくる。結婚式の映像を見たり、未来からこっそり連れられてきた自分の赤ちゃんを世話したり、成長した息子が未来から来たり、妃殿下になったエリが姉と偽って里帰りをしたり。やはりエリと殿下が結婚するという結末が予定されていたのだろうか。残り2話で完結させると予告されながら、描かれないまま永遠の謎となってしまった本作品。実に残念なことである。
本巻でのもう一つの特徴は、エリの財産を管理する王室財務長官フクワウチが準レギュラー化したこと。マール星から色々な人物が登場してきたが、それらはいずれも1回限りの登場。しかし、キャラデザや印税などで得た莫大な財産というネタは、この作品にマンネリならではのお約束な面白さをもたらしかけていたと思う。
ファンサービスとして、ドビンソンやデンカ一家など、過去の藤子キャラをを登場させてくれたこともうれしいところ。たまにこういうのを見てしまうと、思わずやられた!となってしまうものだ。
チンプイ』は、『ドラえもん』大ヒット以降の新作でもっとも面白い作品に仕上がっていたと思う。作者の体調さえ許せば、もっともっと描かれていたに違いない。そう思うと非常に残念なことである。そして、『ドラえもん』大ヒット以後でも新しいものを描き続けようとしていた作者の姿勢に脱帽するのである。