平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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安東能明『鬼子母神』(幻冬舎)

鬼子母神

鬼子母神

工藤公恵は都内の保健センターに勤める三十四歳の保健婦。ある日、公恵の勤務先に渡井敦子という若い母親から異常な電話がかかってきた。ただならぬ様子を察し、同僚とともに駆けつけた公恵が目にしたものは、敦子の三歳になる長女・弥音が血まみれとなった姿だった。幼児虐待――そう直観した公恵は渡井親子を注意深く見守り続けるが、しだいに想像を遙かに超えた虐待の真相が明らかになっていった……。急速に壊れゆく母子の絆。なぜ母は我が子を虐げてしまうのか……? 平凡な家庭に潜む地獄図を描いた問題作! 第1回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。(「BOOK」データベースより引用)

2000年、第1回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作に加筆訂正し、2001年に単行本化。



元々ホラーは苦手なのだが、本作品は幼児虐待を扱ったもの。はっきり言って苦手中の苦手なテーマ。受賞作でなければ、手に取ろうとはしなかっただろう。我慢して読み進めたが、その内容で鬱になりそうで、本当に苦痛だった。物語の真相自体は割と早めに想像つくだろうが、そこに至るまでの過程がもう駄目。つまらないという意味とは別で、ページを重く感じたのは久しぶり。もう精神的に耐えられなかった。逆を言うと、虐待の方を前面に押し出しすぎて、物語が単調になっている感は否めない。もう少しオブラートに包む方法はなかったのだろうか。真相に気付かない主人公公恵にも苛立つし。

人の心の恐怖を扱った作品だけど、普通に単語として挙げる「恐怖」とは違う気がする。得体の知れない恐怖とは異なる、触れてはいけない恐怖の類だろう。この手の作品が好きな人でない限り、お薦めすることが出来ない作品。