平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ミッチェル・スミス『エリー・クラインの収穫』(新潮文庫)

エリー・クラインの収穫 (新潮文庫)

エリー・クラインの収穫 (新潮文庫)

高級娼婦は死んでいた。自宅マンションの浴室で椅子に縛りつけられ、シャワーの熱湯を浴びせられて――。ニューヨーク市警の落ちこぼれ集団、遊軍部隊に所属する女性刑事エリー・クラインは相棒のナードンと共にこの事件の捜査に乗り出した。が、第二、第三の殺人が発生、捜査は難航する。多くを喪い、傷つきながらも、エリーが犯人を執拗に追いつめるまでを冷徹な筆致で描く警察小説。(粗筋紹介より引用)

1987年、アメリカで発表。ミッチェル・スミスのデビュー作。1992年1月翻訳。



分厚い文庫本に、当時の小さすぎる文字が襲いかかってくる。とにかく描写が細かい。細かすぎ。事件だけではなく、主人公エリーの日常、心情が一分一秒まで細かく描かれている。事件を追うだけなら、ここまで細かく描く必要はない。いったい何が作者をここまで駆り立てるのだろう、と思うぐらいだ。しかもその描写が細かいだけならまだしも、死体のグロテスクな部分、暴力描写、心の醜さまでもが細かく描かれるものだから、読む方は悪い意味で圧倒される。精神的攻撃を受けているかのようだ。

内容としては、殺人事件の犯人を落ちこぼれ女性刑事が執念深く追い続けて逮捕する作品。言ってしまえばそれだけ。被害者の女性が娘に送る手紙の内容のところはちょっと変わっていてやや面白かったが、他の部分について内容だけをピックアップしてみると、それほど面白い作品とは思えない。ただ、その執拗とも思える描写が、この作品を際だたせている。

筆力自体はすごいと思うけれど、他に関しては感心しなかった。まあ、それだけかな。