平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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佐藤友之・真壁昊『冤罪の戦後史』(図書出版社)

本書はタイトルこそ『冤罪の戦後史』となっているが、実際は静岡県の冤罪の歴史を扱っている内容である。とはいえ、静岡県は特に冤罪事件が多く出ている県として有名である。特に静岡県警本部強力犯の捜査主任として数々の難事件を“解決”してきた紅林麻雄警部の名前は、冤罪史を語る上では欠かせない人物である。

戦後の静岡県警の歴史とともに、紅林警部やその部下たちがどのようにして冤罪を作り上げていったか、そのメカニズムが詳細に書かれている。紅林警部は冤罪事件の多さで名を残すようになったが、実際のところどこの県でも似たようなことが行われたと思われる。かくも警察は残酷で卑劣で、そしてあくどいことをやってきたのかということがよくわかる一冊である。

紅林警部が亡くなった後でも、静岡県では冤罪事件と思われる重大事件が続いた。特に袴田事件では、いまでも冤罪を訴えて再審請求を起こしているが、その悲痛な叫び声は裁判所に届いていない。

静岡県警は、この負の歴史をどのように捉えているのだろうか。