平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

R・D・ウィングフィールド『フロスト気質(かたぎ)』上下(創元推理文庫)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

ハロウィーンの夜、行方不明の少年を探していた新米巡査が、ゴミに埋もれた少年の死体を発見する。そのうえ連続幼児刺傷犯が新たに罪を重ね、15歳の少女が誘拐され、謎の腐乱死体が見つかるなど、デントン警察はいつも以上に忙しい。よんどころない事情で払底している幹部連の穴埋めをするべく、これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部その人。勝気な女性部長刑事や、因縁浅からぬ警部代行とやりあいながら、休暇返上で働く警部の雄姿ここにあり! 警察小説の大人気シリーズ、待望の第4弾。(上巻粗筋紹介より引用)

カービィ少年の失踪は誘拐事件へと変貌を遂げた。身代金受け渡しの場に急行したジャック・フロスト警部だが、その鼻先で事態は思わぬ展開を見せる。果たして少年の安否は? 母子四人殺害事件や少女誘拐事件など、解決を要する案件は他にも山積みで、フロスト警部疲労とマレット署長の不機嫌は募るばかり。数年前に起きた愛娘轢き逃げ事件にいまだ固執するキャシディ警部代行との仲も悪化する一方で、状況は見事なまでに八方ふさがりだ。悪態をつきながら雨の中を駆けずり回るフロスト警部に、光明は訪れるのか? 大人気シリーズ第4弾。(下巻粗筋紹介より引用)

1995年、発表。2008年7月、邦訳刊行。



デントン署の嫌われ者で仕事中毒のフロスト警部シリーズ第4作。久しぶりに手に取ったが、何のことはない、厚すぎて手に取る気力が湧かなかっただけだ。

デントン署は相も変わらず事件が重ねて起きるし、人がいない、金が無い、などと自分の出世欲しかないマレット署長は相変わらず。嫌味っぷりには磨きがかかったといっていい。今回はアレン警部がいない区て安心できるかと思ったら、フロスト警部と因縁のあるジム・キャシディが警部代行として事件に首を突っ込む。曲がったことが嫌い、規則を曲げることが嫌いなどと言いながらも、事件はすべて自分の手柄にしようとする性格の悪さは、アレン以上。マレット署長といいコンビである。本当に、登場するたびに苛立ってしまう。ここまで来ると、フロスト警部がとてもいい人に見えてくるから不思議だ。いや、実際にはいい人なのだろう。今回はなんだかんだ言いながらも部下たちには慕われているシーンが出てくる。下品すぎる下ネタジョークは相変わらずだが、事件を解決しようという意欲は強いし、なんだかんだ言いながらも弱者に優しい視点も持っている。部下にしっかり手柄も譲るし。あれ、ここまでいい人だったっけ、フロストって?

モジュラー型の警察小説である点は変わらず。殺人事件に刺傷事件、窃盗事件に誘拐事件など色々な事件が輻輳するが、最後にはなんだかんだ解決している。ここまで事件が重なるときの毒としか言いようがない。そのため、作品はどんどんと長くなるが、読んでいる間はその長さを忘れてしまう。やっぱり面白いのだよ、フロストは。

面白いのは分かっているのだが、長いから時間はどうしてもかかる。面白いから一気読みしてしまうため、気が付いたら時間は過ぎ去ってしまう。うーん、手に取るのはとても勇気がいる。それでも本箱のどこかには新刊が隠れているから、いつか手に取ろうと思ってしまうのだろう。