![黒白の囮 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫) 黒白の囮 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51CE5JSG7GL._SL160_.jpg)
- 作者: 高木彬光
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/08/10
- メディア: 文庫
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1967年5月、「新本格推理小説全集」第8巻として読売新聞社より書き下ろし刊行。他に1960年11月「講談倶楽部」掲載の「殺人へのよろめき」と、1961年11月「週刊朝日別冊」掲載の「殺意の審判」を収録。
“グズ茂”こと近松茂道検事シリーズ。第一長編と粗筋では書かれているけれど、1963年の『黒白の虹』にも出ている。解説には当時のあとがきが載っており、「彼は副主人公として、後半で活躍するが、全編の主人公として、長編に登場するのもそう遠くないだろう」と書かれているから、シリーズものとしてはカウントされていない、ということでいいのかな。短編集ではすでに1964年に『捜査検事』としてカッパ・ノベルスから出版されている。
“黒白”とあるとおり、容疑者が黒か白かで二転三転。いくつかの状況証拠が出てきて、これは犯人に間違いないと思ったら犯人ではない証拠が出てきて、という手に汗握る展開である。様々な情報に振り回される警察だが、グズ茂こと近松検事の慎重すぎるぐらい慎重な判断と、ここぞというときの迅速な動きが、ついに真犯人を突き止める。「挑戦状」とは謳われていないものの、読者へ「真犯人を指摘されてはいかがでしょうか」と書いているあたり、かなりの自信作であったと思われる。新しい探偵役を使った書き下ろしということで、相当力を入れて書いたのだろう。最後の方で1箇所首をひねるところはあるけれど、よく考えられたトリックである。高木彬光1960年代の代表作の一つであり、現在の視点からでも充分面白く読むことができる一冊である。20年ぶりくらいに読んだけれど、その面白さは代わらなかった。
松本清張が責任監修であったこの「新本格推理小説全集」については、いずれ全10冊を読んでから思うところを書いてみたいと思う。8年前に一括で買ってから、放りっぱなしなんだよね。
「殺人へのよろめき」「殺意の審判」は近松検事ものの短編。手堅くまとまった作品である。