- 作者: 草野唯雄
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1987/05
- メディア: 文庫
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愛媛の三ッ根鉱山でクローム鉱の調査をしている夫に会いに行く途中の出来事だった。自殺か? それとも他殺なのか?
四国と瀬戸内海を舞台にくり拡げられる異色長編推理。(粗筋紹介より引用)
1972年発表。
草野唯雄初期の長編。女流画家の失踪を追うのは、他人が箸を付けた鍋を食べられないと言うぐらい異常な潔癖性である、鉱業会社の男性社員。そして画家の友人である月刊誌の女性記者。そんな二人は、謎を追うというよりも、はっきり言ってしまえば凸凹コンビの珍道中でしかない。容疑者宅に忍び込んだり、推理を立てては実験したりするのだが、いつも失敗ばかり。推理を突き出しても一蹴される。なのになぜか読者の目の前に提示されるのは、「読者へ挑戦」なのである。
ということで本格ミステリっぽいのだが、いや、一応形は本格ミステリなのだが、どう考えてもこれはバカミスだよなあ。解決編は素直に呆れましたよ。一応それらしい手がかりは散りばめられていますがね、推理する材料はそろっていないでしょう。想像する材料は一応ありましたが。
途中、探偵役の二人の珍道中はそれなりに笑えましたが、書き方はコメディというよりもサスペンス調だし、なんともまあちぐはぐ。途中で出てくるアリバイトリックは、当時としてみても平均点レベルでしょう。
どういう感想にしたらよいか困ってしまうが、どことなくちぐはぐなバカミスですね。章題のすべてに“奇妙な”とあるとおり、奇妙な作品です。普通、“奇妙”と書くと褒め言葉っぽいところがあるのですが、今回は褒め言葉ではありません。