平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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横山光輝『竜神伝説』(講談社漫画文庫)

竜神伝説 (講談社漫画文庫)

竜神伝説 (講談社漫画文庫)

応仁の乱の真っ只中、秘密兵器の亀甲船を使い、琵琶湖を本拠に天下統一の野望をいだく竜神組と出会った若き獅子・一郎太の、ミステリアスにして伝奇ロマン的大スペクタル・アクション。
凄絶な戦乱、落武者の中に一郎太がいた。運悪く、仲間は全滅。一郎太も瀕死の重傷を負うが、危機一髪、不思議な術を使う老人・幻也斉に救われ、組員となった。
竜神組の秘密を知った大名・六角高頼は、撃滅の軍勢を差し向けて……(粗筋紹介より引用)
「少年アクション」1976年5月3日〜9月20日号掲載作品。
「少年アクション」は双葉社より隔週で出版されていた少年漫画誌。残念ながら雑誌が休刊となったため、本作品は第一部完のままで終わっている。そのため、単行本としてまとめられたのは、今回が初めてである。
史実の中に全くのフィクションを挿入するパターンは、同時期に連載された『魔界衆』がある。この作品は、大阪夏の陣後に逃げ出した真田幸村、猿飛佐助、霧隠才蔵が、徳川家を滅ぼすために隠れ里に住む「魔界衆」に助けを求める話である。しかしこの作品は、『伊賀の影丸』などの忍者作品などと同様、あくまで史実の裏舞台を書いたものであり、史実を捻じ曲げるものではない。
本作品がどういう風なストーリーになっていたのかは永遠にわからない。ただ、琵琶湖周辺を支配していた大名六角家、京極家と対する竜神組という存在は、もちろん架空のものだ。彼らの企みはどこまで成功するかわからない。史実のとおり、表舞台に出ることなく消え去るのか。それとも、彼らが琵琶湖周辺を支配するのか。タイトルに伝説とついているのだから、それなりに爪あとは残すのだろう。横山光輝がどこまでを構想していたか、知りたかった気がする。手塚治虫と異なり、自作をそれほど積極的に語らなかった横山光輝なので、本作に関する今後の構想などについても語られたものはないのであろう。それがとても残念である。