平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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小野寺丈『2012 009 conclusion GOD'S WAR サイボーグ009完結編I first』(角川書店)

2012 009 conclusion GOD’S WAR―サイボーグ009完結編〈1(first)〉

2012 009 conclusion GOD’S WAR―サイボーグ009完結編〈1(first)〉

1964年から連載が始まった石ノ森章太郎(当時は石森)『サイボーグ009』。掲載誌をいくつも変えながら書き続けられたこの作品は石ノ森の代表作となり、ライフワークとまで呼ばれるようになった。ゼロゼロナンバーサイボーグ、9人の戦士たちが対する最後の相手は、神だった。それは「天使編」と呼ばれ、1969年から「冒険王」に連載されたが、内容があまりにも壮大であったため収拾がつかなくなり、自ら休載を選ぶしかなかった。その後、「COM」で「神々との闘い編」として再び連載を始めたが、こちらも中断。その後、様々な形で『サイボーグ009』は描き続けられていったが、最後の闘いが描かれることはなかった。

石ノ森は事ある毎にこの最後の闘いについて語っており、描く準備もできていたようだったが、有り余る才能と筆の早さ(月間執筆枚数最大記録保持者だったはず)は彼の寿命を縮める結果となり、1998年に亡くなった。しかし、彼が遺した膨大な数の構想ノートに、009の最終章は残されていた。息子である小野寺丈が、完結編を小説化。



石ノ森の構想ノートを元に小野寺丈が小説の形で発表すると宣言してから何年が経っただろう。とうとうその第1巻が出版されることとなった。しかし実際に読んでみて、感動よりもとまどいを覚える方が大きかった。いったい、石ノ森は何をやりたっかのだろうか。

本巻では、001から004の4人が、神々と遭遇した事件について語られている。それは9人が一丸となって戦う昔のスタイルではなく、サイボーグ一人ひとりが単独で事件を解決する後期のスタイルに近い。私は9人(+ギルモア博士)のチームワークで敵と戦うスタイルの方が好きだった。だからかもしれない。今回の小説にとまどいを覚えるのは。

第1巻では、001から004の4人が神と遭遇した。となると、第2巻では005から008の4人が神と遭遇することになるのだろう。そして最終巻である第3巻で009が登場し、そして最後の闘いが書かれるということになる。うーん、これが本当に石森章太郎がやりたかったことなのだろうか。コミックス「サイボーグ009」第1〜9巻(秋田書店サンデーコミックス)に匹敵するだけのストーリー(10巻のコメントで書いている)になるのだろうか。どうしても読みたかった完結編だが、読まなかったほうが幸せだったのかもしれない。そんな悪い予感が外れることを祈る。