- 作者: 沼田まほかる
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/01/26
- メディア: 単行本
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2004年、第5回ホラーサスペンス大賞受賞作。
ホラーサスペンス大賞最後の作品は、日常の恐怖をリアルに書いたサスペンス。前触れもなくいなくなった息子への不安、次々と明らかになる事実に怯える平凡な中年女性の姿をリアルに捉えている。いきなり子供がいなくなるという話は、『消えた娘』が思い浮かぶのだが、あの作品ほどは人の内面を書き切れてはいないのが残念。
途中までは主人公の不安な気持ちがよく書けていると思うのだが、肝心の結末がつまらない。失踪の理由と周囲で起きる事件が、雰囲気をぶちこわしている。一言で言えば拍子抜け。リアリティを追求すれば、こういう結末がいちばん現実的なのかもしれないが。
「地に足がついた作品」という評は正しいが、足がつきすぎるのは物足りない。結末の着地が決まっていれば、日常に起きるサスペンスを描いた佳作になったかと思うと、非常に惜しい作品である。