平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

山里亮太『天才はあきらめた』(朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

 

  「自分は天才にはなれない」。そう悟った日から、地獄のような努力がはじまった。嫉妬の化け物・南海キャンディーズ山里は、どんなに悔しいことがあっても、それをガソリンにして今日も爆走する。コンビ不仲という暗黒時代を乗り越え再挑戦したM-1グランプリ。そして単独ライブ。その舞台でようやく見つけた景色とは――。2006年に発売された『天才になりたい』を本人が全ページにわたり徹底的に大改稿、新しいエピソードを加筆して、まさかの文庫化! 格好悪いこと、情けないことも全て書いた、芸人の魂の記録。《解説・オードリー若林正恭》(作品紹介より引用)
 2006年11月、朝日新聞社より『天才になりたい』のタイトルで刊行。大幅に加筆修正のうえ、2018年7月、朝日文庫より刊行。

 

 2004年のM-1グランプリで準優勝し、脚光を浴びた南海キャンディーズ山里亮太。山里の生誕からNSC入学、「足軽エンペラー」などを経て結成した南海キャンディーズ。相方のしずちゃんが売れていくのに嫉妬して嫌がらせをし、挙句の果て互いに共演NGとしながらも時を経て互いに分かり合えるようになり、再びM-1に挑み、初の単独ライブを開催するまでを記した自叙伝。
 少なくともテレビで見る山里の頭の回転の速さはすごいと思う。多くの人が山里のことを天才だと思うだろう。その一方、山里の性格の悪さもテレビだけからでも浮かび上がってきている。そんな山里の真の姿を自ら分析し、記している。こうしてみると、やっぱり天才だと思うし、そして嫉妬深く意地が悪い。それでもこれだけレギュラーを抱える売れっ子になるということは、やはりそれだけ芸がすごいわけだし、人としても魅力があるのだろう。いくら芸がすごくても、人間性が悪かったらいつか干される。
 この本を読むと、山里って性格がクズだなあと思ってしまうのだが、ある意味人間の欲望と感情に素直だと思ってしまうし、何より番組を見ると笑ってしまうのだから、実際はいい人なのだろう。
 本文もいいが、それ以上に若林正恭の解説がいい。やっぱりこの二人、似た者同士だと思ってしまうし、全然違うところがあるなとも思ってしまう。どっちも天才なんだろうね。それも努力型の。今更ながら『たりないふたり』『もっとたりないふたり』をHuluで見てこの二人が絡む化学反応に気づき、とくに『さよならたりないふたり』で二人に驚嘆する。
 ということで、若林も結婚したことだし、また『たりないふたり』をやってくれないかな。

アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』上下(創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

 
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

 

  1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけて転落したのか、あるいは……。その死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。燃やされた肖像画、屋敷への空巣、謎の訪問者、そして第二の無残な死。病を得て、余命幾許もない名探偵名探偵アティカス・ピュントの推理は――。現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ・ミステリ!(上巻粗筋紹介より引用)


 名探偵アティカス・ピュントのシリーズ最新作『カササギ殺人事件』の原稿を結末部分まで読み進めた編集者のわたしは激怒する。ミステリを読んでいて、こんなに腹立たしいことってある? 勤務先の《クローヴァーリーフ・ブックス》の上司に連絡が取れずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想もしない事態だった――。ミステリ界のトップ・ランナーが贈る、全ミステリファンへの最高のプレゼント。夢中になって読むこと間違いなし、これがミステリの面白さの原点!(下巻粗筋紹介より引用)
 2017年、発表。2018年9月、創元推理文庫で邦訳刊行。

 作者のアンソニーホロヴィッツは、ヤングアダルト向けの《女王陛下の少年スパイ! アレックス》シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛けており、本書はYA向け以外で初めて書いたオリジナルミステリとのこと。
 今頃読むか、といった感じだが、実は1年前に買って読み始めていた。しかしなかなかページが進まず、いつしか読むのを止めてしまっていた。理由は簡単、上巻の前半部が退屈だったからだ。作中作の形になっているのだが、上巻はほとんどが人気推理小説作家アラン・コンウェイの新作『カササギ殺人事件』となっている。クリスティのオマージュになっているが、クリスティってこんなに退屈だったっけ?と思うぐらい、退屈だった。イギリスの田舎町で殺人事件が起きるのはいいのだが、ポワロやミス・マープルと違い、作中シリーズ探偵のアティカス・ピュントがあまりにも地味で人間的魅力に乏しい。読むのが苦痛だった原因はそれだろう。平和そうな舞台に渦巻く人間模様が明るみになっていくにつれ、物語がようやく面白くなっていく。そして下巻はアラン・コンウェイの謎に迫っていくのだが、ここまでくると逆にページをめくるのがもどかしくなるぐらい面白い。そして、懐かしい、あまりにも懐かしい黄金時代の本格推理小説を堪能することができる。これは見事。古いけれど懐かしい味で、そのくせ現代の調理法も楽しむことができる。
 正月休みで読み直し始め、一気にエンジンがかかりました。休みの日に一気に読むべきだったな、これは。次の休みには、次作を読まないと。

『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/star.html
お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。ゴールデンルーキー賞を中心に大まかなところを。中身も埋めていきたいのだが、時間がない。

 12日に更新していたけれど、ここに描くのを忘れていました。

犯罪の世界を漂う

「求刑死刑・判決無期懲役」を更新。
 松井広志被告の一審無期懲役判決(求刑死刑)を破棄、名古屋地裁に差し戻し。まあ、これもなぜ強盗殺人が適用されなかったのか不思議だった一審判決だったから、差し戻し自体は妥当だと思うけれど、一審判決を破棄したり差し戻したりしているのは、素人の裁判員ではどうにもならないというメッセージなのだろうか。

 

犯罪の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/climb.html
無期懲役判決リスト 2020年度」に1件追加。
 差し戻し審で宮口義弘被告に求刑通り無期懲役判決。差し戻された理由は、当初のさいたま地裁の違法な訴訟指揮であって、一審で傷害致死を適用したことについては問題としていなかったはず。うーん、ひっくり返った理由がわからない。ただ、当初の傷害致死適用は無理があると思ったけれどね。動機も機会もそろっているし。

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』上中下(講談社ノベルス)

冷たい校舎の時は止まる (上) (講談社ノベルズ)

冷たい校舎の時は止まる (上) (講談社ノベルズ)

 
冷たい校舎の時は止まる (中) (講談社ノベルズ)

冷たい校舎の時は止まる (中) (講談社ノベルズ)

 
冷たい校舎の時は止まる  (下) (講談社ノベルス)

冷たい校舎の時は止まる (下) (講談社ノベルス)

 

  ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。(上巻粗筋紹介より引用)
 不可解な現象によって突然校舎に閉じ込められてしまった8人を、ジワジワと侵食し始める恐怖と不安。張り詰めた緊張感の中、グループの一人が忽然と消えた……。未だに思い出すことができない級友の名前。少しずつ明かされていく、それぞれの心に潜む闇。5時53分で止まっていたはずの時計は、次に消される人物と深まる謎に向かって再び時を刻み始めた。(中巻粗筋紹介より引用)
 彼らは思い出せない。どうしても“その名”を思い出すことができない。学園祭最終日、学校の屋上から飛び降りて死んでしまった級友は誰だったのか。緊張と不安に包まれ次々と仲間が消える中、抵抗も空しく時計は進んでいく。そして不気味に鳴り響くチャイムとともにまた一人、誰かが消える。彼らを校舎に閉じ込め漆黒の恐怖に陥れている『ホスト』の正体がついに明らかに。(下巻粗筋紹介より引用)
 2004年、第31回メフィスト賞受賞。2004年6月~8月、3か月にわたり上中下巻刊行。

 

 そういえば読んでいなかったなと思って手に取ってみたのだが、かなり苦痛だった。どう考えてもおかしい登場人物が二人いるので、なんとなく読めてしまったんだよね。それと高校生の描かれ方が、リアリティがないというか、痛々しいというか。なんか大人が考えた高校生像にしか見えなくて。
 展開が遅くてイライラするし、所々で挟まれる各登場人物のエピソードにいら立ってしまった。本当なら丁寧に描かれている、という評にならなければいけないのだが、いら立つほうが先に来ちゃうのでダメ。作者と同名の人物を出す必要もなかったと思う。
 結局長すぎ。もっとコンパクトに書けるだろ、と言いたいところだが、それ以前の話。