平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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駄犬『悪の令嬢と十二の瞳 ~最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録~』(オーバーラップノベルス)

 公爵令嬢セリーナは王太子から婚約破棄され、服毒刑にて人生を終えた――はずだったが、何故か巻き戻り二度目の人生がスタート。ちなみにあれは冤罪だ、とんだ冤罪である。だって「ちょっと聖女の頭めがけて植木鉢を落としただけ」で「殺してはいない」のだから。前回の敗因は有能な部下がいなかったこと。であれば今度は拠り所のない孤児を引き取り暗殺者に育て上げ、自分をコケにしたやつら全員をぶちのめすのだ! こうしてセリーナの従者育成計画が始まるが、過酷な訓練を経て仕上がったのはある意味(・・・・)最強の従者たちと番犬で!?
「我々はセリーナ様を愛しているか?」
「生涯忠誠! 命を懸けて! 忠誠! 忠誠! 忠誠!」
「セリーナ……、“あれ”はなんだね?」
「お父様、彼らは従者としての使命を前に、ああやって気を引き締めているのです」(すまし顔)
 人生二度目の倫理観ぶっ飛びヒロインが征く、ちょっぴりおかしな逆行転生×悪党×勘違い英雄譚!(粗筋紹介より引用)
 2024年7月、書下ろし刊行。

 悪役令嬢セリーナがやり直しの人生で忠実な僕を作ろうと、孤児院の中でも飛び切り手のかかる6人を引き取り、セリーナの趣味で過酷すぎる訓練(ほとんどシゴキ)を行ったら、僕たちがなぜかそれを愛情と勘違いしてしまい、セリーナを絶対視してしまったため、セリーナがかえって戸惑ってしまう。
 やり直しものなのだから、当然セリーナに都合よく進むはずが、実は……という意外性が売りの作品。裏を返すと実は、というのは作者の得意なパターンであり、わかっていても騙されてしまう。リターン+婚約破棄という異世界ものの王道の組み合わせだが、それでも意外性のあるストーリーを考え付くのはさすが。悪役ではなく、本当に意地の悪い令嬢が主人公というところが楽しめる。
 乱歩が裏返しトリックを多用したように、お約束事の裏返しをラノベで多用しているような読み心地。しかし、これだけ早いペースで出版して、作者は大丈夫なんだろうか。