平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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サラ・ウォーターズ『半身』(創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

門をいくつも抜け、曲がりくねった小径(こみち)をたどった奥にある石の迷宮――ミルバンク監獄。一八七四年の秋、テムズ河畔にそびえるこの牢獄を慰問のために訪れたわたしは、不思議な女囚と出逢った。十九歳のその娘シライナは、監獄じゅうの静けさをかき集めたよりも深い静寂をまとっていた。なぜこんな人が、こんなところに? すると、看守から聞かされた。あの女は霊媒なの。戸惑うわたしの前に、やがて、秘めやかに謎が零れ落ちてくる……。魔術的な筆さばきの物語が終局に至って突きつける、青天の霹靂のごとき結末。サマセット・モーム賞など多くの文学賞に輝く本書は、魔物のように妖しい魅力に富む、絶品のミステリ!(粗筋紹介より引用)

1999年、ロンドンのGreene & Heaton Ltd.より刊行。アメリカ図書館協会賞やサンデー・タイムズの若手作家年間最優秀賞、さらに、35歳以下の作家を対象とするサマセット・モーム賞を受賞。2003年5月、翻訳。『週刊文春』2003年傑作ミステリーベスト10/海外部門第1位、『このミステリーがすごい! 2004年版』海外編ベスト10第1位。



前評判はすごかったし、その後の年間ランキングでも大絶賛された一冊。しかし私、新刊で挑み、何回も跳ね返されていました。なんか、主人公のマーガレット・ブライアという上流階級の令嬢が監獄へ慰問に訪れるという展開がどうも好きになれなかったし、そもそも女囚が集められている監獄というのが好きになれない。女性ばかりが集まるというのはどうも苦手。日記調の淡々とした文章も、小説が纏う妖しさも不気味だったこともある。

とはいえ、ようやくこの本に向き合おうという気力と時間が取れたので読んでみたけれど、思っていたほど読みにくくもない。日記調の文章も、慣れてしまえばわりとすいすい読める。ただ、女性ばかりの物語というのはやっぱり苦手。まあ、マーガレットに感情移入できないというのがいちばんの理由なのだが。本人にその気がなくても、上から目線的な雰囲気が醸し出されていることは否定できない。1873年という時代が時代だから仕方がないのだろうが。

霊媒の少女の謎はさすがにしてやられたが、なんというか、ああそうなのとうなづくだけで終わってしまうのは、やっぱり感性が鈍くなっているのかもしれない。もうちょっと時間をかけて読むべきだっただろうか。