平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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魔夜峰央『プリコロ』(太田出版)

プリコロ

プリコロ

友人のパタリロに呼ばれてマリネラに来たプリコロことプリンス=コロネット。しかし肝心のパタリロは商談でフランスへ。偶然開かれていた国際警察会議に来ていた警視総監を訪ねエンペラーホテルに来たプリコロは、マリネラ警察のグルメ警視から、マリネラ銀座で殺人事件があったことを聞く。古いアパートで嫌われていた店子が撲殺されていたが、容疑のある他の店子は犯行時刻に全員大家の部屋で集会を開いていた。「マリネラの殺人」。

コロネット探偵事務所にまともな客が訪れた。イギリスから来た彼の泊まっているホテルで、夜中にトイレに入ると妙な声が聞こえてくると言う。ホテルで確認すると、彼の隣の部屋に泊まっているのは、フランスの著名な霊感師アンリ。プリコロと彼は、アンリの部屋に行ったが、そこへ入ってきた客が首を絞められて苦しみ出す。二人は慌ててフロントへ行き救急車を呼んだが、帰ってきてみると客は死んでいた。「霊魂殺人事件」。
S国の中継基地を設置する予定だったコロネラのビルが火災で全焼した。S国軍情報部のミハイル大佐はコロネラ王国の財務大臣を脅し、別の低層ビルの最上階を用意しろと脅す。そこに入っていた会社が引っ越す当日、社長の愛人だった秘書が飛び降り自殺した。「社長秘書の謎」。
コロネラ王国にパタリロが訪れる。バンコランからミハイル大佐がコロネラで何を画策しているのか調べてほしいと依頼されたためだが、その当日にプリンホテルで殺人事件が発生。被害者はCIAに所属していた。「パタリロ登場!?」。
太田出版のWEBサイト「ぽこぽこ」2012年3月〜6月掲載。
祥伝社東京創元社に続く3社目からの出版。作者お気に入りなんだろうなあ、と思ってしまう。
犯人は当たっているが推理は的外れ、というパターンはいつも通りだが、今回はミハイル大佐がコロネラで何かを画策しており、バンコランやヒューイットがそれを探ろうとしているという別ストーリーが全4話を通して描かれている。ただ、バンコランは声と影のみ、ヒューイットは声のみ、マライヒフィガロは影のみの登場であり、あくまで本筋はプリコロの迷推理である。
ただ、事件に二つの解決パターンを用意しておくのは毎度の面白さなのだが、犯人が勘違いして自供するネタがだんだんちゃちなものになってきているのは残念である。
トラウマに並ぶ3社登場となったが、「ぽこぽこ」での連載は既に終了。今後もどこかで続くのだろうか。