- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 文庫
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2000年、講談社ノベルスより書き下ろし刊行作品の文庫化。
著者が江戸川乱歩へ捧げるとあるとおり、乱歩通俗探偵小説を現代に甦らせようとした一作。文庫の帯でも「磔刑、絞首刑、美女監禁」と、いかにもといったキーワードが並ぶ。各章のタイトルも、乱歩らしい言葉が並ぶ。"殺人喜劇王"による復讐劇。残酷な、グロテスクともいえる連続殺人事件。捕らわれる名探偵。
荒唐無稽で通そうとしないのなら、やはり現代に"怪人"が甦るだけの意味付けをもうちょっとしっかりしてほしかったところ。乱歩通俗で多くの読者が突っ込んだ、「何でそんな面倒なことをするの?」という疑問を増幅させてはいけない。
これは個人的に不快だったところだが、殺される側の心理を書きすぎ。乱歩は通俗探偵小説において結構グロテスクな殺人方法を書いてきたけれど、殺される側の恐怖はほとんど書いていないはず。書かれた場合は、死なないですむケースがほとんど。例外は『影男』かな。ただ、あれも後で後悔したと一応のフォローがある。いずれにしても乱歩は、読者にグロテスク以上のやり切れなさというものは与えてこなかった。そこのところを、もう少し作者には考えてほしかった。
試みは買うけれど、アイデアを詰め込みすぎた失敗作。そんな印象。