平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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栗本薫『鬼面の研究』(講談社文庫)

鬼面の研究 (講談社文庫)

鬼面の研究 (講談社文庫)

取材で訪ねた秘境・鬼家荘(くがのしょう)。嵐のために外界との連絡を断たれたロケ地で取材班が一人また一人と殺されていく──。鬼の子孫を自称し伝説と因習に生きる住民と、やらせ精神あふれる現代の鬼っ子・テレビ人間の間に起こる連続殺人事件の謎に、名探偵伊集院大介と森カオルの名コンビが挑む傑作長編推理。(粗筋紹介より引用)

1981年6月、『小説現代臨時増刊号』に掲載。1981年11月、講談社より刊行。1984年8月、文庫化。



伊集院大介の3作目で、古き良き探偵小説の設定をそのまま現代に持ち込んだ作品。九州の山奥にある、文明から取り残されたかのような、古い風習の残る村。葬式があるから帰れと言われるも、頼み込んでなんとか村に入ったはいいが、嵐で橋が落ちて閉じ込められる始末。そして動機が不明なまま、一人一人が続けて殺されていく。しかも見立て殺人にダイイングメッセージ。これでもかとばかりの内容がそろえられている。おまけに「読者の挑戦」まで出てくるのだから、本格探偵小説ファンにはたまらない設定。手掛かりらしい手掛かりもないまま、根拠のない推理で犯人が恐れ入ってしまうのは非常に残念だが、最後の仕掛けも含め、なかなかの仕上がりにはなっていると思う。所々で繰り広げられる現代批判も、栗本薫らしい視点の一つなのだろう。

だが、読んでいて全然面白くないのは何故だろう。どうも、伊集院大介というキャラクターが飄々としすぎて、好きになれない。ワソトン役の森カオルは自意識過剰が強すぎて、好きになれない。主人公二人が好きになれないのだから、面白いはずがない。さらに伊集院がいるせいかどうか不明だが、連続殺人が起きていても緊迫感がない。これでは、ミステリとして楽しめるはずがない。

毎度のことながら、女性作家の場合ウマが合わないケースがあるのはなぜなんだろう。読み方が悪いとは思っていないのだが。