平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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アントニイ・バークリー『トライアル&エラー』(創元推理文庫)

トライアル&エラー (創元推理文庫 123-2)

トライアル&エラー (創元推理文庫 123-2)

<ロンドン・レビュー>誌の寄稿家トッドハンター氏は、動脈瘤で主治医からあと数か月の寿命だと宣告された。そこで、彼は余命短い期間に有益なる殺人を犯そうという結論に達した。しかし、生と死に関して理論的だが異常な見解を持つ編集長や、アマチュア犯罪研究家、快楽のために一家を犠牲にする作家、犯人の告白を信じない捜査官などのまえに事態は従来の推理小説を皮肉るようなユーモアを交えながら意外な方向へと発展した。「殺意」につぐバークリーの畢生の大作。(粗筋紹介より引用)

1937年刊行、バークリーの代表作。



今頃読むのか、な一冊。これだけは、なぜか手を付けていなかった。今から70年も前の作品だけど、今読んでも十分に面白い。時代設定などは当然当時のものだが、このひねくれ度は今でも十分通用するものである。

主人公や読者を皮肉るような展開の数々。そこにあるのは揶揄ではなくて、あくまで批判と風刺、そしてユーモアであるから、少々耳に痛いような言葉でも、読んでいて楽しい。倒叙作品ではあるが、『歌う白骨』などのような本格推理小説ではない。自身の「殺意」のようなサスペンスでもない。これは倒叙の形を使った、一種の風刺小説とでも評すればいいのだろう。

それにしても、チタウィック氏が出てくる作品は、へんてこな、そして面白い作品ばかりだ。



どうでもいいが、創元推理文庫の「倒叙」マークの時計は12時20分あたりをさしているのだが、これはいったいどういう意味があったのだろうか。クロフツの例の作品と関連があるのだろうか。