平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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夏樹静子『人を呑むホテル』(光文社文庫)

人を呑むホテル (光文社文庫)

人を呑むホテル (光文社文庫)

クローズの晩に泊まると誰かが行方不明になる」という奇怪な噂が伝わるホテル精進湖。赤司行彦の恩師・坪坂教授と夫人が、その日に宿泊し、行方不明になった。行彦は、婚約者の畑野テオリとともに、閉鎖中のホテルへ忍び込むが収穫はない。その後、坪坂の首吊り死体が山中で発見されるが、夫人は…。死体移動の謎と愛憎の揺れ動きを描く、恐怖サスペンス巨編。(粗筋紹介より引用)

週刊誌「女性自身」に1982年4月29日号〜1983年6月2日号まで「人をよぶホテル」の名前で連載。文庫オリジナル。



週刊誌連載ということで、短い間隔でサスペンスを盛り上げているのはさすがの腕というべきだが、そのせいで主人公の女性のイメージがなんとなく不安定なものになっている気もする。二組の夫婦、それから一組のカップルにおける男女の愛情の対比は面白いところであるが、サスペンスを盛り上げているかどうかは疑問。

せっかくの“人を呑むホテル”という設定が、あまり生かされていないのは残念。物語の最初と、途中で舞台とはなるが、あとは別の場所が舞台となっているので、わざわざホテルをタイトルにする必要はなかったのではないかと思ってしまう。

週刊誌連載作品ならではの、それなりの長編作品という程度か。職人の腕で書かれたという程度の作品。