平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』(小学館文庫)

 T県警が誇る「風間教場」は、キャリアの浅い刑事が突然送り込まれる育成システム。捜査一課強行犯係の現役刑事・風間公親と事件現場をともにする、マンツーマンのスパルタ指導が待っている。三か月間みっちり学んだ卒業生は例外なくエース級の刑事として活躍しているが、落第すれば交番勤務に逆戻り。風間からのプレッシャーに耐えながら捜査にあたる新米刑事と、完全犯罪を目論む狡猾な犯罪者たちとのスリリングな攻防戦の行方は!? テレビドラマ化も話題の「教場」シリーズ、警察学校の鬼教官誕生の秘密に迫る第三弾。(粗筋紹介より引用)
 『STORY BOX』2014~2017年に随時掲載。2017年9月、小学館より単行本刊行。2017年9月、文庫化。

 

 タクシー会社の御曹司との結婚が決まった日中弓。2年関係を持っていた芦沢健太郎に別れ話を持ち出すも、裸の写真をばらまくと脅され、タクシー車内で殺してしまう。「第一話 仮面の軌跡」。
 画家で画廊を営む向坂善紀は四年前に離婚した。高校二年の息子匠吾は画の才能があるが、元妻の再婚相手で歯医者の苅部達郎は、それを許さなかった。「第二話 三枚の画廊の絵」。
 夫が遺した建設会社を経営する佐柄美幸の息子である小学三年生の研人は、いじめで不登校となっている。しかし担任である諸田伸枝は、頑なに認めようとしなかった。「第三話 ブロンズの墓穴」。
 IT関係の仕事をしている佐久田肇は、隣に住む劇団女優の筧麻由佳に惹かれていた。休みの日、焦る麻由佳に助けを求められて部屋に入ると、劇団の俳優元木伊知朗が首吊り自殺をしようとしていた。止めようとしたが、元木は椅子を蹴飛ばした。「第四話 第四の終章」。
 デザイナーの仁谷継秀は、認知症になった二十歳年上の妻・清香の介護で疲れ果てていた。さらに仁谷には、別の恋人がいた。仁谷が外出中、清香はガス中毒で亡くなった。「第五話 指輪のレクイエム」。
 国立T大学法医学教室の教授である椎垣久仁臣は、司法解剖中のミスで助教宇部祥宏に青酸ガス中毒による大けがを負わせてしまった。この事故が公になると、次期医学学長の就任予定が流れてしまう。「第六話 毒のある骸」。

 

 『教場』『教場2』の主人公、風間公親の前日譚。各話タイトルは、『刑事コロンボ』のエピソード名のもじりとのこと。倒叙ミステリの連作短編集だが、風間に教えを受けている若手たちが事件解決に挑むという形がちょっと新しい。風間がすべてを知っているようだが口を出してもヒント止まりで、あくまで若手刑事にまかせて解決しようとする。
 風間というキャラクターあっての作品集であり、しかも話があっさりめ。若手刑事たちからの風間の印象をそれぞれ語らせているというところからも、ドラマ化前提の作品集のような気がしなくもない。風間ファンならこれでいいのかもしれないが、そうでない人には物足りないだろう。