平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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サンドウィッチマン『復活力』(幻冬舎文庫)

 

復活力 (幻冬舎文庫)

復活力 (幻冬舎文庫)

 

  強面だけど心優しいコンビとして国民的人気者の、青春時代の素顔とは?――安アパートで10年間、布団を並べて眠った。二人で舞台に出たら観客も二人だった。トイレには「みー君へ」と書かれた富澤から伊達へのメモが貼られていた。恋人も嫉妬する(! ?)長~い蜜月! 笑いを心底愛し、震災後の東北を支援し続ける二人の、バイタリティの原点。(粗筋紹介より引用)
 2018年8月刊行。2008年9月に幻冬舎より刊行された『敗者復活』を大幅に加筆・修正し、改題。

 

 今や人気ナンバー1芸人であるサンドウィッチマンの初書籍の改題文庫化。加筆修正したとあるが、文庫版あとがき以外はどこを加筆したのかはわからない。
 サンドウィッチマンM-1優勝は衝撃的だった。当時『エンタの神様』は全然見ていなかったので、サンドウィッチマンは『笑点』などで何回か見たことがある程度だった。『エンタの神様』には出ていたが、マスコミには全然取り上げてもらえず、「無名」と言われても仕方がない。敗者復活からの頂点というドラマティックな展開も含め、まさにM-1ドリームの申し子ともいうべきコンビであり、実力さえあれば誰でもスターになれるという売れない芸人の夢を体現してくれたコンビだろう。
 本書はそんなサンドウィッチマンの少年時代から出会い、コンビ結成、売れない時代、敗者復活からの頂点、そしてテレビ狂想曲といった流れを一冊にしている。単行本時代に読もうと思っていたのだが、結局手に取ることのないまま今まで来てしまった。ということで文庫化されたことでようやく読むことができたのだが、こうやって見るとテレビで話している内容も多かったので、なんとなくおさらいしている気分になった。それでもM-1直前の心理状態は読みごたえがあった。やっぱり吉本芸人のための大会と思っていた人も多かっただろう。そう思い込んでいた彼ら自身の言葉だから、M-1のガチンコ感がリアルに伝わってくる。
 全く緊張しているように見えなかった舞台の裏側にも引き込まれた。「ピザのデリバリー」でセリフに引っかかったな、と思った場所(テクニシャンのところ)はあったが、まさか違うところでセリフを忘れていたとは思わなかった。また、ハチミツ二郎たちの優しさにも感動するし、ネタ中に出演者のたまり場で机を叩いたり椅子を蹴ったりした人がいたというのも、芸人たちのリアルが伝わってきた。
 10年後のあとがきもいい。テレビに慣れ、少しずつ売れっ子になっていった彼らの、そして東日本大震災に遭遇した彼らの思いが伝わってくる。2019年もライブツアーがある。彼らが言う通り、50歳になっても、そして60歳になっても舞台に立ち続けてほしいものだ。