平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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倉知淳『猫丸先輩の空論』(講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

年齢・職業ともに不詳の童顔探偵猫丸先輩が、日常を"本格推理"する! イラストレーターの家のベランダに毎朝決まって置かれるペットボトル、交通事故現場に集結させられた無線タクシー、密室状態のテントの中で割れ、散乱していた7個のスイカ……などなど不可解で理不尽な謎がスラリと解かれる推理の極み6編。(粗筋紹介より引用)

メフィスト』掲載の短編5本に、書下ろし1本を加え、2005年9月、刊行。



新進イラストレーターのベランダに毎朝ペットボトルが置かれる。中に入っているのはただの水。「水のそとの何か」。

友人が交通事故に遭った場所へ来た大西。そこに複数の会社のタクシーが、鈴木という客を送迎に来たと何台も現れて。「とむらい自動車」。

幼馴染の真美に誘われ、虐待されている猫を救出することになった幸太。そこの館では、複数のネコのうちたった一匹だけが虐待されているという。「子ねこを救え」。

スナックの常連である支部長に誘われ、全日本スイカ割り愛好会の大会を手伝うことになった新井。支部長と飲み物を買いに行って砂浜に帰ってくると、テントの中にあったスイカ15個のうち7個が割られていた。「な、なつのこ」。

恐るべき大食いの早苗と、その友人明日香。今日はステーキ屋で食べたいと、5kgのお肉に挑戦。ところが早苗は肉を目の前にして、いきなり店の外に飛び出してしまった。「魚か肉か食い物」。

一人で残業をしている部屋に、電話が次々と掛かってくる。目的は何か。「夜の猫丸」。



作者のデビュー作から続く猫丸先輩シリーズ。今のところ、これが最新刊かな。相変わらず寡作というか、仕事をしないというか。

不思議な日常の現象に猫丸が推理するのだが、はっきり言って推理ではなく、タイトルにある通り「空論」である。まあ、つじつま合わせの推理が妙に説得力あるところが楽しいので、合っているかどうかなんてどうでもいい。ユーモアとして楽しめれば、それでいい。

イラストの猫丸は妙に可愛いが、実際の猫丸は結構ブラック。どうやって生きているのかわからないが、作者はこういう風に生きたかったんじゃないかなと思ってしまう。