平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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馬場啓一『ザ・ハードボイルド ものにこだわる探偵たち』(CBS・ソニー出版)

ザ・ハードボイルド―ものにこだわる探偵たち

ザ・ハードボイルド―ものにこだわる探偵たち

探偵の中にはさまざまな経歴や人生をそのキャラクターに盛り込まれた男たちがいる。一人一人のキャラクターにこそ、まずその作者たちはストーリーを作っていくうえで最も心血を注いでいるはずである。そして、そのキャラクターは、心情やイデオロギーを語って出てくるものではなく、多くの場合、モノに託して表現される。酒の飲み方に男の人生を投影させ、選ぶ拳銃でその男の生き方の流儀をオーバーラップさせる。ハードボイルドの作者たちはこういう作法で、キャラクターを作りあげていっているのだ。(表紙より引用)

1986年4月、刊行。



「酒」「煙草」「遊戯」「道具と小物」「銃・武器」「車」「服装」「部屋」「食事」といったモノを通して語られるハードボイルド論。内藤陳、温水ゆかり、馬場啓一の座談会、さらに内藤陳、木村二郎、細越麟太郎、山口雅也、菅野國彦、河村要助、大沢在昌、温水ゆかり、東理夫によるハードボイルド論とおススメ10作の紹介が収録されている。

言われてみると確かにハードボイルドの主人公って、モノにこだわっている気がする。そこに着目したのはさすが、『スペンサーの料理』の著者というべきか。ユニークなハードボイルド評論集であるが、作者の好みの作家が中心となっていることもあり、やや偏りがあるのは仕方がないところか。通俗ハードボイルドが少ない気がするし、日本の作品はほぼ皆無(あっても、海外が舞台の作品のみ)。日本作品が混じると、もう少しウェットな部分もピックアップされたかもしれない。まあ、気楽に読めるからいいか。おススメ10作も読んでいて楽しいし。