- 作者: 小川勝己
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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戦慄と驚愕の超一級品のクライム・アクション! 第二十回横溝正史賞正賞受賞作。(粗筋紹介より引用)
2000年、第20回横溝正史賞受賞作。2003年5月、文庫化。
ヤクザのくせに気が弱く、妻にも逃げられた子持ちの木島史郎。マルチに誘われて浮気と勘違いされ自殺未遂で身障者となった夫を抱えてラブホテルで働く三宮明日美、かつて明日美をマルチに誘いとうとう離婚に追い込まれ、それでも整形を繰り返して借金を抱える葉山しのぶ、かつて強盗に一価を殺害され犯された経験を持ち、今では自らの存在に現実感が得られない藤波渚。明日美としのぶが銀行強盗の下見に行ったところで実際の銀行強盗に出会い、渚と仲間になる。一方親分からライバル組長を殺せと命令されるも予想通りに失敗し、組から追われる羽目になる史郎。家に戻ると娘はおらず、預かってもらっていた隣の絵画教室で、先生や先生の娘とともに殺されていた。逃げる途中、偶然明日美たちと出会い、仲間に加わる。
一般の主婦が犯行に手を染めるという点で桐野夏生『OUT』と比較されていたが、普通の、だけど弱い立場の人間が徐々に追い詰められて最後に爆発するといった点や、別々の人たちが徐々に集結するという点では、奥田英朗『最悪』あたりの方に近い話。ただタイトルが示すとおり、死人がわんさか出てくる。主要登場人物がドジであるため、それとなくユーモア感はあるものの、不幸な人たちの集まりであることから、ムードは暗いし、後味もあまりよくない。登場人物では渚が一番よいキャラクターだと思う。むしろこのキャラクターを前面に押し出すべきじゃなかったかな。
描写は上手いし、ストーリーの組み立て方も上手い。次はどうなるんだろうという描き方もなかなか。欠点は、登場人物が多すぎたことじゃないだろうか。ヤクザの面々などは減らすことができたと思う。渚が語る銃の蘊蓄も少々うるさかった。とはいえ、デビュー作でこれだけのものを書かれれば、受賞させないわけにはいかないだろう。一級品のクライムノベルである。