平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』(ノン・ノベル)

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)

他人の嘘を必ず見抜くことができる市役所勤務でリーダーの成瀬、演説の達人で喫茶店主の響野、スリの天才で並外れた動物好きの青年久遠、正確な体内時計を持っているシングルマザーの雪子。四人はギャング、すなわち常に成功させる銀行強盗団であった。そして今日も成功するはずだった。しかし逃走中の車に突っ込んできた車は、同じく逃走中の現金輸送車強盗団。彼らに車だけでなく、奪ったはずの4000万円まで奪われる羽目となった。取り返す動き始めたのだが、雪子の息子である慎一に不穏な影が迫る。さらに他殺体まで遭遇する羽目になり。最後に笑うのは一体だれか。

2003年2月、書き下ろし。



1996年、第13回サントリーミステリー大賞佳作受賞作品『悪党たちが目にしみる』が原型と聞いていたので、今更ながら読んでみた作品。あとがきを読むと、登場人物は同じだが、作品の内容は違うということだったので、あえて読む必要はなかったなとちょっと後悔。ちなみにそちらの方は銀行強盗襲撃後、誘拐事件に巻き込まれるという話とのこと。

クライムコメディとあるが、コメディの中に社会的要素や批判をシレッと入れてくるあたりは作者らしいところか。ただ四人のキャラクターが濃すぎて、それぞれが好き勝手に主張するものだから、どうもテンポに乗りきれない。慎一につきまとう影の正体が知れるあたりまで変調な流れが続くので、読みながら苛立ってばかりいた。言ってしまえば、行動より語りが多い。登場人物は思ったほど多くないため、筋書きがある程度予想できる分、その苛立ちは余計に募るばかり。結末の付け方も予定調和であったため、あまり楽しめなかった。まあ、細かい伏線を一気に回収する腕には感心したが。