- 作者: 逢坂剛
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/01
- メディア: 単行本
- クリック: 27回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
神宮署、警察庁、マスコミ、暴力団に加え、禿富鷹秋の未亡人司津子までが裏帳簿のコピーを巡り暗躍する。禿鷹シリーズの完結?作品。『別冊文藝春秋』2008年7月号〜2009年11月号掲連載。
悪徳刑事ハゲタカこと禿富鷹秋の活躍については前作『禿鷹狩り』で完結したが、神宮署の裏帳簿のコピーという爆弾は残されていた。本作ではそれを巡り、過去の登場人物が様々な動きを見せる。今までのシリーズで残されていた謎の完結編でもあり、総決算ともいえる。シリーズの主人公が既に死んでいるのに、総決算も何もないものだが、これもまた作者の腕なのかもしれない。
本作で特に強烈なインパクトを残す登場人物は、目的達成のためならどんな手段でも執ろうとする女警部・岩動。その冷酷なまでの行動原理には恐れ入るし、ただ試験の結果がよかっただけで実際は甘ちゃんであるキャリア(ここでは警察庁警備企画課参事官、朝妻勝義警視正が代表格)とは何から何まで役者が違う。また、そんな岩動の攻撃や追求をひょうひょうと躱し続け、ノンキャリアならではの処世術を見せつける御子柴もたいしたものであり、そしてシリーズ初登場(一応前作最後にちょこっとだけ出ていたが)である禿富司津子の活躍にも驚きである。
警察側の登場人物で、「正義に燃える」人が誰一人いないことには現実を見せられたような気もするが、それは仕方のないことか。マスコミの汚い部分についてはどうでもいいけれど。
今までのシリーズで活躍していた渋六興業の野田憲次や水間英人の活躍が今ひとつだったのは残念だったが、マスコミ側も含め、今まで張られていた伏線の多くが回収された一気呵成の結末は見事。連続するアクションシーンも含め、読了感は爽快である。
唯一といえそうな疑問点は残されているが、これに関して続編はあるのだろうか。