平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『海の王子』第1巻(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

海の王子 1 (藤子・F・不二雄大全集)

海の王子 1 (藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集第6回配本の一冊。1959年、週刊『少年サンデー』創刊から連載された作品であり、デビュー8年目の藤子にとって初のヒット作ともいえる作品である。まだトキワ荘に住んでいた頃の作品であり、海の王子やチマたち主人公側を藤子Fが、悪役側を藤子Aがデザインし執筆した共作である。残念ながらこの執筆分けについては記載されていなかったが、次巻以降で解説されるのだろうか。
最初の9回(「黒いおおかみの挑戦」の途中まで)は高垣葵(たかがきまもる)が原案を担当しており、今回の解説も担当。というか、高垣葵ってまだ生存していたんだね(とても失礼な発言)。当時の人気放送作家と聞いていたから、もっと年を召されていたかと思っていた。逆算すると、この作品の頃は31歳になるのか。
1回の連載が7ページということもあって、1ページあたりにおけるストーリーの密度が濃い。米澤嘉博藤子不二雄論―FとAの方程式』では、互いにアイディアを戦わせていたのだろう、みたいな推測が書かれていたが、確かに現代でも十分に通用するアイディアがこれでもかとばかりに盛り込まれている。どうやってこの強敵に勝つのだろうかと、いう当時の読者の息吹が聞こえてきそうだ。
そういえば「おにいさま」と呼びかけるチマのことを妹キャラの元祖みたいな位置づけをしていた人がいたと思ったが、誰だっただろうか(これも米澤だったか?)。
この作品が出版されることを待っていたファンも多いだろう。中央公論社から出版された「藤子不二雄ランド」では第1回配本であり、栄光のVol.1作品(どうでもいいが、自分が持っているのは第5版なんだよな。いまだにこれがくやしい)。今回は単行本未収録であった学年誌版も収録されるのでとても楽しみだ。

どうでもいいが、そろそろ全集を置くところが無くなってきた。今からこんなことを言っていてはいけないのだが。