- 作者: マーガレット・ミラー,Margaret Millar,雨沢泰
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/12/18
- メディア: 文庫
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1955年発表、1956年ハヤカワ・ポケット・ミステリの一冊として翻訳。本書は改変された1978年版を底本とした新訳。
戦後のアメリカ女流サスペンス作家を代表するマーガレット・ミラーの代表作。当時住んでいた場所の近くにあった本屋のカバーがかかっていたから、新刊で買ったものをダンボールに入れていたんだな、多分。
精神異常者と思われる人物が巻き起こすサスペンス(当時はこういう作品をニューロティック・サスペンスと呼んでいたらしい)かつ、ミステリらしい捻りのきいた作品であるが、これが50年以上も前に出ていたということに驚く。感情を抑えた筆致から醸し出される恐怖は、現代でも充分に通じる。精神異常だけではなく、殺人の謎と合理的な解決を少ないページ数で破綻なく絡めるところは、まさに傑作と呼ぶにふさわしい仕上がりである。
解説で宮脇孝雄が、夫であるロス・マクドナルドとどちらが美文であるかを語っており、また訳者の雨沢泰が本書の改変とそれに纏わる翻訳のエピソードを語っている。解説者と訳者が、このような視点で作品を語ってくれるのはとても嬉しい。くだらない自分語りの解説やうそ偽りだらけの翻訳者のあとがき(つまらない作品でも傑作とだけ書いておしまいみたいなもの)は読みたくない。
今頃手に取ってみたが、素直に楽しむことができた。よかった、よかった。
(感想がかなり投げやりになっているように見えるのは、でかい仕事を控えているせいだな)