平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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湊かなえ『告白』(双葉社)

告白

告白

シングルマザーだった女性の先生が、退職を決め、終業式でクラスの人たちに話したのは、事故で死んだとされた娘が、実はこのクラスの生徒に殺された、という内容だった。2007年、第29回小説推理新人賞受賞作「聖職者」。

他に「小説推理」に掲載された「殉教者」「慈愛者」、さらに書き下ろし「求道者」「信奉者」「伝道者」を収録した連作短編集。



「聖職者」が受賞されたときからかなり話題となっていた作者の初作品集。一部の作品は単独でも読むことができるが、登場人物がつながっているので、やはりこうやってまとめて一冊の本として読んだほうが、より恐ろしさが伝わってくる。

最初の作品の肝が、二作目以降のストーリーと密接に絡んでくるため、粗筋や中身に絡んだ感想を書くのが難しい。ただ言えるのは、作者がとてつもない実力を持っていること、そしてとても面白くて恐ろしい作品集であること、そして誰かに薦めたくなる本だということである。先入観なしに読んでほしい。(一番つまらない感想の書き方だとは、自分でもわかっている)

雑誌掲載作品より、書き下ろした作品のほうが精彩を欠いているように感じられるのが気がかり。もともと連作にすることを構想していたのか、それとも好評だったから続きを考えたのかはわからないが、言葉ではいえない引っ掛かりがあったのは残念。特にあの動機は、今の社会への皮肉なんだろうか。

なお、帯の後ろにある「書店員からの告白」は読まないこと。何の薬にもなりゃしない。特に、わずかなスペースに○○という言葉を書くなよ、某書店員。ネタばらしに近いぞ、それは。