平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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吉田忠『藤子不二雄物語 ハムサラダくん 完全版』上下(マガジンファイブ)

ハムこと藤本弘。サラダこと安孫子素雄。二人は小学校の時に出会い、そして漫画家を目指す。手塚治虫の『新宝島』を読み、感銘を受けた二人は合作を書き始める。そして二人は上京し、プロの漫画家への道を歩き始める。「コロコロコミック」に連載された、小学生版『まんが道』。単行本未収録分約300Pを含め、完全版として刊行。
作者の吉田忠は、藤子スタジオアシスタント第1号。代表作は「とんちの一休さん」シリーズ、「ドラえもんなぞなぞ単行本」シリーズなど。
藤子不二雄物語と銘打たれているが、第一部の宝塚に住む手塚治虫に会う有名なシーンまでは『まんが道』(あすなろ編)に準拠しているが、第二部の上京後はほとんどオリジナル。漫画少年トキワ荘も出てこない。友人たちの漫画家はいずれも架空のものだ。それでも当時のコロコロ読者は、藤子ストーリーとして読んでいたと思う。そういう自分も、その一人だったが(笑)。
まんが道』を読んだ後に改めてこの作品を読んでみても、結構面白い。確かにオリジナルではあるし、編集者も含め登場人物が妙に熱血調なのだが、それでも藤子不二雄ならありそうだな、というような話ばかりなのである。
まんが道』は漫画史上に残る大傑作だが、この作品もまた傑作である。もう一つの『まんが道』の刊行を祝したい。そして、大勢の人に読んでもらいたい。