平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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津村秀介『西の旅 長崎の殺人』(祥伝社 ノン・ポシェット)

西の旅 長崎の殺人 (ノン・ポシェット)

西の旅 長崎の殺人 (ノン・ポシェット)

<被害者は、誰を殺したのか?>長崎の一流ホテルで置きた殺人事件に興味を抱いたルポライター浦上伸介は、被害者野山が「長崎駅近くのホテルで女を殺したらしい(・・・)」と漏らしていたという情報を入手した。この情報を追うことこそが、野山を殺した犯人に辿り着く早道と思われた。が、該当する殺人事件は皆無であった。では、被害者は誰を殺し、誰に殺されたのか……!?(粗筋紹介より引用)

1989年10月、祥伝社ノン・ノベルより刊行された作品の文庫化。



津村作品のシリーズ・キャラクターである浦上伸介が事件の謎を解き明かす、津村秀介お得意のアリバイもの。前半は犯人さがし、そして後半は犯人のアリバイ破りが中心となっている。

発端はちょっと面白い。夫婦が泊まったホテルの一室で男が殺害された。しかしその男は夫ではなく、全くの別人だった。これには興味をひかれた。モンタージュが作られるが、そこで捜査は行き詰まる。ところが浦上たちは犯人である夫婦を簡単に見つけてしまう。地の利があったとはいえ、かなり安易。まあ、実際の事件なんてそんな物かも知れないが。おまけに事件の動機まで簡単に探り当ててしまうので、そこで完全に興醒め。後半はアリバイ破りに費やされるのだが、前半の呆気なさに比べると、歩みが遅すぎてもどかしい。

アリバイ破りそのもののトリックは結構考えられて作られているのだが、これだけのトリックを考える頭脳を持っているのなら、まず最初に疑われないような行動をとれよ、と言いたくなる。この辺のちぐはぐさが、好きになれない。

知り合いからもらったので、浦上伸介シリーズを初めて読んでみたが、こんな程度なのかなと思ってしまった。読者の眼を引きつけようとするのは巧いが、そこ止まり。流して読まれるのを目的としているのなら、成功しているかも。