- 作者: 多島斗志之
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1990/08
- メディア: 文庫
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1987年3月刊行『ソ連謀略計画(シベリア・プラン)を撃て』を改題。
ソ連による気候改造計画を阻止するため、来日中のソ連要人を誘拐して尋問する。一歩間違えば国際問題に発展するような計画であるが、計画そのものはとても単純である。シンプル・イズ・ベスト。単純な計画ほどわかりやすく、騙されやすい。
そしてまた、物語もシンプルに創られている。最近の作家なら、計画に関わる人たちの生い立ちや背景、内面などをもっと深く掘り下げていくだろう。……掘り下げると描けば聞こえがいいが、実際は無駄なページの使い方でもある。登場人物に感情移入させるために、余計なことを書いているだけのことだ。本書のように最小限の描き方でも、必要なことさえ描いてあれば、読者は登場人物に共感し、物語に没頭することができるのだ。
今から20年近く前に発表された作品である。ソ連やKGBが出てくるなど、時代設定は古い。だからといって、物語自体が古びているということはない。時代設定さえ把握してしまえば、あとは物語の魅力に取り憑かれることは間違いない。
ただ、あまりにもシンプルすぎるという声が挙がるかもしれない。特に最近の重厚な冒険小説になれてしまった人から見たら、物足りなさを感じるだろう。あと、このタイトルはあまりにも陳腐。もうちょっと何とかならなかったのか。絶対タイトルで損をしている。