平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大沢在昌『秋に墓標を』(角川書店)

秋に墓標を

秋に墓標を



千葉・勝浦の別荘地で、松原龍は静かな生活にこだわり続けていた。ある日、浜辺で杏奈という女と出逢い、捨てていた恋愛感情を呼び起こされる。エージェントから逃げ出してきた杏奈を匿おうとするが、彼女は失踪してしまう。龍は己の恋愛感情と杏奈とのあるべき距離を確かめるために彼女を追う。

殺し屋、CIA、FBI、チャイニーズマフィア、警視庁、複雑に絡む巨大な悪の罠、龍が心の底から求めていたものは!?

男と女の新しい関係を、いままでにない形で描くハードボイルドの新境地。(帯より引用)

野性時代」1994.12〜1996.9、「カドカワミステリ」1999.12〜2002.2まで連載。



新刊で買って、今頃読む。まあ、いつものことだ。

大沢流、女を追いかける男のセンチメンタル・ハードボイルド、といったところ。主人公のどこに惚れるんだ?と登場人物に聞いてみたくなってしまうところだが、それはもてない読者の僻みだろう。

読んでいる間は面白いし、先の展開が気になって仕方がないのだが、読んでしまうと意外に呆気ない。事件に関わる組織がでかい割に、関わる人物が皆間抜けに見えてしまうのは問題だろう。そのせいで、物語に緊迫感が足りない。それでも読者を引っ張る力はさすが大沢とうなってしまうのだが、力業だけで終わってしまうのは残念だ。

連載で書いている間に、どんどん構想が膨らんでしまったのだろうな。前半のしっとりとしたムードで終われば、それこそ新しいハードボイルドになったのかと思うと、残念だ。