- 作者: 蘇部健一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 新書
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メフィスト章受賞作で物議を醸したあの『六枚のとんかつ』の第二弾……という触れ込みなのだが、実際はグループA、B、Cでカテゴライズされた短編集。グループA「最後の事件」「三色パンの秘密」「甘い罠」は、『六枚のとんかつ』に登場した保険調査員もの。グループB「午前一時のシンデレラ」「行列のできるパン屋さん」「姿なき目撃者」「見えない局面」は『動かぬ証拠』と同様、犯罪の証拠が最後にイラストで提示される半下石警部もの。グループC「誓いのホームラン」「地球最後の日?」「叶わぬ想い」「きみがくれたメロディ」はノンシリーズ。
グループAは『六とん2』というタイトルにするため、無理矢理書いたとしか思えないような作品ばかり。インパクトがあったのは、名探偵古藤が消えたという冒頭の文章くらい。古藤が名探偵という印象は全くないのだが(笑)。
グループBは何とか読めるというところ。グループA、Cにもイラストを使った作品が含まれているのだから、いっそのこと半下石警部ものでそろえた方が、短編集としてのトーンは保てたと思う。「見えない局面」のアイディアは面白いが、一般的なものではないだろう。
グループCのうち、「誓いのホームラン」は作者らしい後味の悪さ。鬱になりそうな作品をよくぞ考え出せるものだ。「地球最後の日?」はオチが未だにわからない。別にわからなくてもいいけれど。
「叶わぬ想い」は、『届かぬ想い』のアナザバージョン。なんでまあこんな展開を考えつくのだろうと、つくづく不思議に思ってしまう。私は基本的にハッピーエンドが好きだから、こういう作風は苦手だね。
「きみがくれたメロディ」は、珍しく感動系のちょっとSF作品。本作品集でベストを選ぶならこれか。
『六枚のとんかつ』がそれなりに売れたから(他の作品は増刷されているのだろうか?)、こういうタイトルを付けさせられたんだろうなあ。もしくは、保険調査員もので統一しようとしたが、アイディアが出なかったため、こういう形になったのかも。この作者の場合、あとがきの裏を読まないとならない。もうちょっとポジティブに考えて書けばいいのに、と思ってしまう。二番煎じという作品集を自ら書いてしまうところが、この人の凄いところなんだろう。