平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

夏樹静子『目撃 ある愛のはじまり』(角川文庫)

目撃―ある愛のはじまり (角川文庫)

目撃―ある愛のはじまり (角川文庫)

剣道の早朝げいこの帰り道の公園で、少年恭太は、崖から落ちるところを中年の男に助けられた。だが、男はその阿佐発生した金融業者殺しの犯人だった。同時刻、夫の出張中に愛する男性と密会していた麻子は、偶然その二人の姿を目撃してしまう。その後、少年が犯人から狙われていることを知った麻子は、名乗り出ることもできず、匿名の投書を警察に送り目撃事実を知らせたのだった。このことから、彼女は新たな殺人事件の罠にはめられていった……。

自らの愛を貫こうとする、若き人妻の揺れ動く心を書いたサスペンス豊かな会心の長編推理。(粗筋紹介より引用)。

『蒸発』『喪失』に続く書下ろし長編推理第三弾。1975年発表、作者中期の代表作。



常に女性の視点から事件に巻き込まれる女性の姿と愛のかたちを書き続けた作者らしい、サスペンスとロマンスがあふれる作品。二転三転するプロット、事件に巻き込まれる女性や少年のサスペンス、そして意外な犯人と解決。そして愛する人を信じ続ける美しさ。脂がのりきった作者中期の代表作というその冠に間違いはない。まあ、メロドラマと酷評する人を否定することはできないかもしれないけれど。