平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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米澤穂信『巴里マカロンの謎』(創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

  • 作者:米澤 穂信
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 文庫
 

  「わたしたちはこれから、新しくオープンしたお店、パティスリー・コギ・アネックス・ルリコに行って新作マカロンを食べます」その店のティー&マカロンセットで注文できるマカロンは三種類。しかし小佐内さんの皿には、あるはずのない四つめのマカロンが乗っていた。誰がなぜ四つめのマカロンを置いたのか。それ以前に、四種の中で増えたマカロンはどれか。「ぼくが思うに、これは観察力が鍵になる」小鳩君は早速思考を巡らし始める……。心穏やかで無害で易きに流れる、誰にも迷惑をかけない小市民になるべく互恵関係を結んだあの二人が帰ってきました! お待ちかねシリーズ十一年ぶりの新刊、四編収録の作品集登場。(粗筋紹介より引用)
 2016~2019年に『ミステリーズ!』に掲載された「巴里マカロンの謎」「紐育チーズケーキの謎」「伯林あげぱんの謎」に書き下ろし「花府シュークリームの謎」を収録。2020年1月、創元推理文庫より刊行。

 

 『秋季限定栗きんとん事件』依頼11年ぶりの小市民シリーズ最新作。とはいえ、今回の四作品はいずれも小鳩君と小佐内さんが高校一年生であり、シリーズ番外編と言える。
 二人が抱える重いテーマが出てこない分、ストレートに二人のシリーズを楽しむことはできる。謎自体はいずれも小粒であるし、推理にもそれほど飛躍があるわけではなく、シリーズファンだったら楽しめればいいでしょう、みたいな雰囲気は否めない。もちろん、単独で読んでもわかるような内容にはなっているが。
 とりあえず、出たことを素直に喜べばいいんじゃないかな、これは。作者がシリーズの感覚を取り戻そうとしている作品集でしょう。個人的には、オチがほとんど見えていても笑ってしまった「伯林あげぱんの謎」が好き。

海渡英祐『影の座標』(講談社)

影の座標 (1968年)

影の座標 (1968年)

 

  中堅だが技術水準の高い光和化学の平取締役・研究所次長であり、社長関根俊吾の長女光子の婿でもある岸田博が土曜日の夜から行方不明となった。岸田は堅物で酒や女にも興味がない。しかも工業薬品の新製品開発の中心人物あった。関根は調査課の雨宮敏行と社史編纂担当の稲垣に、岸田を探してほしいと依頼する。雨宮は父親が元警視庁の名警部で、自らも高校時代から父親に協力して鋭い推理力を発揮しており、仲間内からはエラリイ・レーンというニックネームが与えられていた。しかし法律の勉強が性に合わず、平凡な会社員になっていた。雨宮の大学時代の同窓で、営業部係長の佐伯達也が関根の次女和子と交際しており、話を聞いた和子が関根に推薦した結果であった。そして雨宮は中高時代の同窓生である稲垣に協力を依頼したのだ。
 調査を進める二人だが、手がかりが少なく難航。社長秘書の北山卓治は、三年前に使い込みで首になった荒木進の存在を思い出す。また関根の元養子で現在は公認会計士の河村久信を訪ねても心当たりがない。しかし岸田の部下である小林幹夫が給料以上の遊びをしていることを突き止め、小林の家を訪ねるも、小林は殺されていた。
 1968年9月、講談社より刊行。

 

 海渡英祐は1967年に『伯林―一八八八年』で第13回江戸川乱歩賞を受賞しているので、本作は受賞後第一長編になるのかな。
 ワトソン役となった稲垣の視点で物語が進む。昭和40年代でレーンだとのワトソンだのちょっと時代錯誤かなと思いながら読み進めた。最初の事件が殺人ではなく失踪というところがうまい。殺人ではすぐ警察が出てくるので、あえて失踪とすることで素人の人物が捜査に乗り出す点を自然にしている。素人探偵の雨宮自身が「今日では、名探偵なんてものは、存在価値がないんだよ」と言うのも、書かれた時代を考えるとものすごくリアリティがあるし、だからこそ雨宮の立ち位置が絶妙と言える。
 事件の背景はどちらかと言えば当時の社会派推理小説に寄せていながらも、内容は骨のある本格推理小説で、アリバイのない人物、動機のある人物を探していくうちに意外な犯人像が浮かんでくる。謎の出し方が小出しでタイミングが良く、そして一つの事実が発見されると新しい謎が浮かぶという王道の展開で全く飽きが来ない。
 作者にしても乱歩賞後なのでかなり力を入れただろうが、それにふさわしい力作。細部まで考え抜かれており、面白かった。きめ細やかな作品、と言っていいだろう。

タイガー服部『古今東西プロレスラー伝説』(ベースボール・マガジン社)

新日本プロレスの名レフェリーが明かす 古今東西プロレスラー伝説

新日本プロレスの名レフェリーが明かす 古今東西プロレスラー伝説

  • 作者:タイガー服部
  • 発売日: 2020/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  業界キャリア50年を誇り、新日本プロレス、ジャパン・プロレス、全日本プロレスなどメジャー団体の歴史的試合を数多く裁いたレジェンド・レフェリーの著者は、外国人選手を発掘・招聘する渉外担当しても名高い。ハルク・ホーガンアンドレ・ザ・ジャイアントザ・ロード・ウォリアーズ長州力オカダ・カズチカ…日本のプロレス界に名を遺した新旧の名外国人選手から交流の深い日本人選手まで。古今東西のプロレスラーたちの知られざる素顔、リング外の仰天エピソードを明かす!(折り返しより引用)
 2013年5月より約4年間、『週刊プロレス』に連載された「タイガー服部のYOUなに聞きたい!?」を2020年2月、単行本化。オカダ・カズチカとの特別対談を収録。

 

 2020年2月19日の後楽園ホール大会で、惜しまれつつもレフェリーを引退したタイガー服部による、名プロレスラーたちの数々のエピソードを記した一冊。連載当時、聞き取りに近かった内容をそのまままとめてしまっているものだから、前ぺページに出てきただろう、なんて突っ込みたくなるくらい同じ内容が再び出てくるなんてこともあるが、本人の話し方も含めてそれもまた一興なんだろう。
 内容的にも十分面白いのだが、有名レスラーがほとんどで、どうしても他の著書でも似たようなエピソードが見受けられる。それならいっそ、ご本人の人生をそのまま一冊にしてくれた方がいいけれどなあ。当時のフロリダのプロレスとか、馬場と猪木の違いとか、ジャパンやWJ崩壊の裏側なんてところはぜひとも読んでみたい。所々では書かれているんだけど、まだまだ隠されたエピソードはあるはずなんだから。まあ服部本人からしたら、あくまで主役はプロレスラーで、レフェリーは見えなくていい存在だなんて思っているだろうけれど。
 ということで今のうちにもう一冊、まとめてほしいなあ。孫ぐらい年が離れているオカダとの緩い対談は必見です。

R-1ぐらんぷり2020を見た

 何一つ笑えなかった。低レベルだった。あっ、失笑したものはあったな。何だったか忘れたけれど。ここまでピン芸人の実力って落ちているの? それとも私自身が古い人間だから笑えないの?

 野田クリスタルの最後のネタは、結構問題になるんじゃないのか?

 と思っていたら、野田クリスタルが優勝か。M-1キングオブコントに比べると、R-1に思い入れのなさそうな芸人が優勝しているのは納得いかないな。