「死刑確定囚リスト」「死刑執行・判決推移」を更新。
「無期懲役判決リスト 2018年度」に1件追加。
まさかの年末執行。想定外でしたね。東京地裁は日産のあの方のせいでマスコミの目が厳しいから、執行は有り得ないと思っていました。大阪での執行は頭にありませんでした。
貴志祐介『新世界より』上中下(講談社文庫)
- 作者: 貴志祐介
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町の外に出てはならない――禁を犯した子どもたちに倫理委員会の手が伸びる。記憶を操り、危険な兆候を見せた子どもを排除することで実現した見せかけの安定。外界で繁栄するグロテスクな生物の正体と、空恐ろしい伝説の真意が明らかにされるとき、「神の力」が孕む底なしの暗黒が暴れ狂いだそうとしていた。(中間粗筋紹介より引用)
夏祭りの夜に起きた大殺戮。悲鳴と鳴咽に包まれた町を後にして、選ばれし者は目的の地へと急ぐ。それが何よりも残酷であろうとも、真実に近付くために。流血で塗り固められた大地の上でもなお、人類は生き抜かなければならない。構想30年、想像力の限りを尽くして描かれた五感と魂を揺さぶる記念碑的傑作!(下巻粗筋紹介より引用)
2008年1月、講談社より書き下ろし刊行。2008年、第29回日本SF大賞受賞。2009年8月、ノベルス化。2011年1月、講談社文庫化。
タイトルはドボルザークの交響曲第9番『新世界より』から採られた。デビュー前から構想を温めており、1986年には120枚の中編「凍った嘴」(岸裕介名義)のタイトルで第12回ハヤカワSFコンテストに応募し、佳作受賞。ただし活字化はされなかった。本書は2000枚近い分量まで膨れ上がっているが、内容を見ると確かにそれぐらいの分量は必要であり、むしろこのアイディアを中編で仕上げようとしたことが無茶であった。
主人公渡辺早季の手記で、「I 若葉の季節」「II 夏闇」「III 深秋」「IV 冬の遠雷」「V劫火」「VI 闇に燃えし篝火は」の六章仕立てとなっている。I、IIが12歳、III、IVが14歳、そしてV、VIが26歳である。
最初こそややもどかしさを感じたものの、上巻の途中からは一気に読んだ。読み終わってみると、ただただすごい、としか言いようがない。よくぞここまで考えて、描き上げたものだ。一つ一つのアイディア自体には既存のものが含まれるかもしれないが、それでもこれだけのものをまとめ上げるには、並々ならぬ苦労と時間が必要だろう。
正直言って、それ以上の言葉が思いつかない。構想力と筆力にただただ脱帽。やっぱりSFには、これぐらいの壮大な世界を求めたい。
大倉崇裕『白虹』(PHP研究所)
- 作者: 大倉崇裕
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/12
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月刊文庫『文蔵』2009年10月〜2010年8月連載。加筆・修正後、2010年12月、単行本刊行。
「白虹」は太陽や月の周りに巨大な丸い光の輪が見える現象。「日暈」という言葉の方が有名な気もする。
大学時代にワンダーフォーゲル部に在籍していた大倉らしい山岳を舞台とした作品であり、その描写はさすがと言わせるところだが、事件そのものは山岳とは関係が無い。できれば絡めて欲しかったところだが。事件を追う内に過去の事件との絡みを見つけ、更に自分も巻き込まれ、過去と向かい合うという、典型的なパターンの作品だが、山の描写が一服の清涼剤となっており、読後感は悪くない。
ただ、何となく読んでいる内に終わってしまったところはある。それなりに盛り上がったのだが、主人公が精神的にぐずぐずしているところが気になった。そんな迷いが、そのまま小説のテンポにも影響していたような気がする。
夏樹静子『最後に愛を見たのは』(講談社文庫)
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1984年10月、単行本刊行。1987年7月、文庫化。
母子家庭、父子家庭、離婚、慰謝料など、時代背景を鏡に愛憎あふれる殺人事件を追ったミステリ。事件の謎自体はそれほど難しくはないが、事件を取り巻く登場人物たちの丁寧な心情が印象深い。愛し合った男女が分かれると、ここまで憎み合うかね、と言いたくなるぐらい、描き方が巧い。作者が女性だからというわけではないかもしれないが、男性にとっては分の悪い描き方になっている。もっともこれは男性目線だからだろう。よくよく見ると、慰謝料の支払いに遅れて請求されて文句を言うとか、結婚する気はあまりないが子供の世話はしてほしいとか、男の方が非常に身勝手である。まだまだ男の方の立場が強かった時代か。
時代背景を写し取ったミステリとしては面白い。まあ、それだけなんだが。