- 作者: キャサリンネヴィル,Katherine Neville,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1998/09
- メディア: 文庫
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コンピュータ専門家キャサリンは、左遷されたアルジェで「モングラン・サーヴィス」の秘密を握る人物をついに探し当て、駒の在り処めざして決死の砂漠縦断を試みる。二世紀の時間に隔てられた物語が一つに溶け合うとき、意外な結末が……。推理・歴史・伝奇・冒険などあらゆる要素がふんだんに盛り込まれた傑作。(下巻粗筋紹介より引用)
1998年12月、発表。1991年10月、邦訳単行本刊行。1998年9月、文春文庫化。
フランス革命前後の18世紀末と、1972〜1973年の現代。「モングラン・サーヴィス」を巡り、過酷な争奪戦が繰り広げられる。そしていつしか舞台はアルジェリアまで飛び、二つの歴史が融合する。
ファンタジーであり、冒険小説であり、歴史小説であり、SFであり……、そしてミステリであり。粗筋紹介にある通り、あらゆる要素がふんだんに盛り込まれている。
特に過去パートにおいては、歴史の教科書に出てくるような偉人たちが数多く登場し、「モングラン・サーヴィス」を巡って様々な駆け引きが繰り広げられる。現代パートにおいては、チェスの大会で起きた奇怪な自殺事件を皮切りに、主人公であり、コンピュータの専門家であるキャサリン・ヴェリスが様々な思惑に巻き込まれながらも、自ら運命を切り開いていく。
よくぞまあ、ここまでスケールの大きい内容をまとめられたものだと素直に感心。上下巻の長さを感じなかった。ただ、過去パートに比べると現代パートが見劣りしてしまうのは、登場人物と舞台のスケールが違いすぎるから仕方のないことかもしれないが、上巻に比べ下巻の後半になると失速してしまうのが残念。それと、海外ではチェスは当たり前なのだろうが、日本ではルールがそれほど知られているというわけではないので、チェスの知識が必要な部分があったところはルールブックを見直したりしたため、ちょっと流れを削いでしまったのは、個人的に残念なところである。
キャサリンよりも、過去パートの主人公である見習い修道女のミレーユの方があまりにも魅力的で、こっちに感情移入してしまったなあ。まあ、好みの問題だろうが。
ちなみに続編があるらしい。翻訳されているのなら読んでみたい。