- 作者: カーター・ブラウン,高橋豊
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1963
- メディア: 新書
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ボイドは二つ返事で引きうけると、グロリアの秘書エイプリル・シャワーズに会いにいった。そして、グロリアがエドワード・ウールリッチ二世なるウォール街の大立者とヨットでフロリダのマハイア・バーに行ったこと、ジャズ・シンガーのエレン・フィッツロイと、トランペット吹きのマスカット・ムリンズも一緒だということを確かめると、それとばかりにマハイア・バーへとんだ。グロリアたちのヨットはすぐ見つかった。が、ボイドがそのヨットへ近づくと、なかからデキシーランドの葬送曲『ああ、彼らはもうしゃべれない』が流れてきた。ボイドは不吉な予感に襲われた!(粗筋紹介より引用)
1961年、発表。ダニー・ボイドシリーズ8作目。1963年、翻訳刊行。
1950年代後半から1970年代の軽ハードボイルドの雄と言ったらカーター・ブラウン。グラマーな女私立探偵メイヴィス・セドリッツやアル・ウィラー警部とともに作者の代表的なシリーズキャラクターが、女に弱い私立探偵、ダニー・ボイド。本作品では男と逃げ出した人気女優を追いかける。
ウールリッチは株が暴落して破産寸前、さらにグロリアも贅沢が過ぎて借金だらけで、互いに相手の金が目当てだったというお粗末。グロリアはすぐに見つかるが、連れて行こうとしたら殴られて意識を失う。目を覚ますと、目の前にいるのは、ウールリッチに二万ドルの貸しがある賭博師のルー・バロンとその子分たち。そこへ流れてくるマスカットの葬式の歌、「ああ、彼はもうしゃべらない」。気になったボイドとバロンたちがヨットに駆けつけると、そこには射殺されたエレンの死体が。全員は警察によって宿泊していた山小屋に泊められる。グロリアを返すためには、事件を解決しなければならない。ということで、右往左往するボイド。
内容的には大したことないが、ドタバタするボイドの姿がコミカルで、展開はスピーディー。当然お色気はあるし、アクションもあり。動機のある人物はそろっている中で、犯人が誰かという点を最後まで引っ張る展開はなかなか楽しい。深みは全くないが、時間を潰すにはぴったりだ。
カーター・ブラウンは久しぶりに読んだが、ボイド物は初めて。それでも楽しく読めたのだから、売れたのもわかる気がする。ベストに選ぶことは絶対ないだろうが、こういう作品を書く作家がいても、悪くない。