平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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笹本稜平『漏洩 素行調査官』(光文社)

漏洩 素行調査官

漏洩 素行調査官

大物仕手集団が絡んだ株のインサイダー取引疑惑を疑われたものの、警視庁警務部人事一課監察係による調査の結果無実であることが判明した警視庁刑事部捜査二課企業犯第二係。逆に疑惑を追いかけ始めた第二係だったが、係長の戸田光利が閑職に追いやられ、定年を二年残して退職。直後、くも膜下出血で倒れてしまう。戸田を慕う部下の沢井昭敏は、疑惑に蓋をしようとする新任の係長から疎まれ、逆に真相を探ろうとする。一方、監察係の入江、北本、本郷もまた疑惑の真相を追いかけ、上層部が絡んでいることを突き止めるのだが。

小説宝石』2011年4月号〜2012年2月号連載。2012年5月刊行。『素行捜査官』『白日夢 素行捜査官2』に続く好評シリーズ第三弾。



近年は警察小説シリーズを書き続けている笹本だが、『小説推理』に書いている「越境捜査」シリーズに比べると、本シリーズは重いテーマを扱っており、展開も暗い。本作品は本郷岳志たちよりも、若い沢井昭敏の行動に重点が置かれている。新しい要素を加味したことは良かったが、よりストーリーを重くしてしまった感もある。重くなってもそれが面白い方向に進めば良いのだが、ページをめくる手を重くしてしまうのは困ったもの。もうちょっとスカッとした展開があっても良かったのにと、毎回思ってしまう。

笹本の弱点である、駆け足気味の結末とご都合主義は、本作でも変わらなかった。こればっかりはどうにかならないものか。