- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1983/08
- メディア: 文庫
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1981年1月、講談社より刊行。1983年8月、文庫化。
後にワトソン役となる森カオルが、高校時代に遭遇した事件。同時に、伊集院大介とカオルが初めて出会った事件でもある。作品としては伊集院大介シリーズの第2作になる。時系列でいえば、『絃の聖域』より前になるのか。
書かれた時代性や、現在とのギャップというものもあるだろうが、語り手でもある森カオルの感性というか、考え方がどうしても痛々しく見えてしまうのは私だけだろうか。だが、当時の少女小説の主人公って、こんな風に自意識過剰だったような気もする。まあ、美人生徒会長である高村竜子に憧れるところあたりは、今も昔も変わらないような気がするが。
事件が中盤に起きるため、ややいらいらさせられるせいもあるだろうが、密室事件のトリックはまだしも、解決に至るまでの伏線の張り方は今一つ。さらにいえば、終盤におけるカオルの暴走ぶりが、また痛々しいというか。だからこそ、伊集院大介の優しい視線がこの作品全体を覆っているわけであり、タイトルも"優しい"と付くのだろう。
森カオルは、作者自身を一部投影した姿なのだろう。作者がこのような小説を書いたのは、昔を懐かしんだからなのか。それとも単に、高校を舞台としたアイディアを思いついたからだろうか。いずれにしても、中年の男性が読むには少々キツイ作品。