- 作者: 宮部みゆき
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16年前、土井崎夫妻はなぜ娘を手にかけねばならなかったのか。
『産経新聞』2005年7月1日〜2006年8月13日連載。2007年8月、加筆・改稿の上単行本化。2010年2月、文庫化。
宮部みゆきの代表作の一つである『模倣犯』から9年後を舞台とし、真犯人の正体を暴いたフリーライター・前畑滋子を主人公とするスピンオフ作品。 冒頭から、誰もが知らない秘密を絵に描くという「予知能力」を持つ少年の話が登場するため、これは宮部お得意の超能力ものかと思わせた。上巻は、母親からの依頼を受けた滋子が延々と取材を続ける。取材と言っても、発表するつもりはないのだから、捜査といってよいかも知れない。16年前に発生し、既に時効となった娘殺人事件の謎を追うようになる。
それにしても長い。滋子が等の超能力を信じるまでに丸々上巻分を使っているぐらいである。底の部分を丁寧と見るべきか、冗長と見るべきかによって、本作品の評価は少し変わるかもしれない。ちなみに私の評価は後者である。それは、下巻もだらだら続いているから思ったことなのかもしれない。
なんというか、本来は等の超能力について調べていたはずなのに、いつの間にか土井垣夫婦による娘殺人事件の方に主題が移ってしまい、さらにこの娘とかかわっていた三和明夫の話に流れ、最後はすべてが一つに集約する。その流れがまどろっこしい。遠回りしているわけではないのだろうが、読み終わってみればもっと短くできたんじゃないかと思わせる部分も多い。
それもこれも、結局は主人公が前畑滋子という点にあるのではないだろうか。このストーリーなら、主人公がで滋子ある必然性はなく、単純に著名な女性ジャーナリストというだけでよかったはず。そうすれば、もっと早くゴールをむかえていただろう。滋子が『模倣犯』の過去に囚われるシーンが、この作品でははっきり言って余計である。多分この作品を読む人で、『模倣犯』を読んでいない人はいないだろうと思うけれど、読んでいない人から見たらわけのわからない部分が多く、読んだ人から見たら結局はファンサービスでしかなかった。そこがなければ、このラストで書かれた「楽園」の意味も、もう少し明確に浮かび上がったに違いない。
個人的な評価としては微妙。読んでいて退屈はしない作品ではあるが、それ以上ではなかった。